未経験100名で挑むよさこい大舞台。地域活性化に全力を注ぐ学生たち——静岡大学よさこいサークル「お茶ノ子祭々」
全国から集まった約100名の学生が活動する、静岡大学よさこいサークル「お茶ノ子祭々」。メンバーのほとんどが大学からよさこいを始めた初心者でありながら、週3回の練習を重ね、直近の大会では総合4位を獲得するなど、確かな実績を残しています。
また、「地域を盛り上げる」という目標のもと、地域のイベントや介護施設などで演舞を披露し、多くの人に元気を届けています。
その一方で、100人規模の組織だからこその意見の衝突や、年間800万円に上る活動資金の確保、さらに経験豊富な社会人チームという強力なライバルの存在など、さまざまな課題にも向き合ってきました。
そうした困難を、学生たちはどのように乗り越え、組織として成長してきたのでしょうか。
今回は、その背景や取り組みについて、代表の麻生大翔さんに話を伺いました。

——よさこいサークル「お茶ノ子祭々」について概要を教えてください。
私たちは、現在約100名で活動しているよさこいサークルです。男女比はおよそ4対6で、女性メンバーがやや多い構成となっています。
直近の実績としては、今年3月に開催された「虹彩よさこい」でファイナルに進出し、総合4位を獲得しました。
また、国立大学という特性もあり、北海道から沖縄まで全国各地から学生が集まっています。そのため、入部のきっかけとしては、よさこいそのものへの興味に加えて、新しい友人を作りたいという思いで入部する学生も多くいます。
さらに、メンバーのほとんどが大学からよさこいを始めています。皆が初心者として同じスタートラインに立つため、経験の有無に関係なく挑戦しやすい環境が整っていることも、このサークルの大きな特徴です。
サークル全体の雰囲気としては、派手で目立つタイプの人が多いというより、普段は落ち着いて授業を受けているような学生が多く在籍しています。その分、互いに協力しながら活動を楽しみ、一体感を持って取り組めることが私たちの強みです。

——100人でひとつの演舞をどのように作り上げているのでしょうか?
私たちは毎年、静岡県にゆかりのあるテーマを設定して演舞を制作しています。例えば、これまでには富士市に伝わる「竹取物語」や「富士山」を題材にした演舞を作ってきました。
テーマが決まると、まず作曲家に楽曲制作を依頼します。その後、完成した楽曲をもとに、メンバーが「振り班」「美術班」「茶ノ国祭り運営班」に分かれ、それぞれの役割を担いながら同時に制作を進めていきます。
約100名のメンバーがそれぞれの班で動くため、組織としての連携体制も大切にしています。具体的には、代表、振り・美術・楽曲の各統括に加え、100人の隊列を決めるフォーメーション担当2名を含む計6名が中心となり、密に連絡を取り合っています。
各班の情報はそれぞれの統括が取りまとめ、幹部間で共有することで、情報の行き違いや伝達ミスが起きないようにしています。
また、サークルへの熱量は非常に高く、練習時間も多いため、衣装の袴を履いたまま授業に向かう学生もいるほどです。それほど日常の中によさこいが根付いているのも、このサークルの特徴です。
さらに、夏にはバーベキュー、秋には運動会など、練習以外のイベントにも力を入れており、そうした場を通じて学年を超えた交流を深めています。
——大人数の組織をまとめる中で、どのような課題があり、どう乗り越えてきましたか?
100人規模のサークルになると、アルバイトや学業などそれぞれの事情に加え、活動に対する熱量にも個人差があるため、どうしてもすれ違いや摩擦が生まれることがあります。
そこで私たちは、1つ上の代の先輩方がした「意見箱」という仕組みを受け継ぎ、
活用しています。
匿名で意見を出せるため、たとえば、「夕方からアルバイトに入りたいので練習を朝にしてほしい」といった、率直な声も集めやすくなっています。こうした意見を早い段階で把握することで、不満が大きくなる前に練習時間を調整するなど、改善につなげることができています。
また、後輩の育成においても意識していることがあります。3年生は活動へのモチベーションが高い一方で、入部したばかりの1年生に同じペースで練習を求めると、負担が大きくなり、ついていけなくなるメンバーが出てしまう可能性があります。
そのため、学年や習熟度に合わせて練習の強度を調整し、無理なく成長できる環境づくりを心がけています。
さらに、モチベーションが下がっているメンバーに対しては、幹部が直接声をかけることでプレッシャーになってしまう場合もあるため、同級生を通じて自然にフォローするなど、一人ひとりとの距離感に合わせたマネジメントを意識しています。

——これまでの活動で最も悔しかった経験と、そこから得た学びを教えてください。
最も悔しかったのは、私が2年生の夏に出場した「にっぽんど真ん中祭り」での経験です。
当時はチームとしての完成度に大きな自信があり、ファイナル進出も十分に狙えると考えて大会に臨みました。しかし、結果は思うようにはなりませんでした。
自分たちとしては、これ以上ない演舞ができたという手応えがあったからこそ、なぜ結果につながらなかったのか分からず、その後に何を改善すべきかも見えなくなってしまいました。だからこそ、当時は大きな葛藤を感じました。
その状況を乗り越えるために、メンバー同士で徹底的に話し合いを重ねました。
それまでは、先輩方が作り上げてきた演舞を一つの理想形として目指していた部分がありましたが、この経験を通じて、先輩方が築いてきた型にとらわれすぎていたことにも気づきました。
結果をしっかり受け止めたうえで、そこからは既存の形を追うのではなく、自分たちらしいオリジナルの表現を作っていこうという意識へと切り替わりました。
この経験から、自信を持って取り組むことの大切さだけでなく、結果を素直に受け止めて次につなげる柔軟さの重要性も学びました。
——社会人チームと競う中で、学生ならではの強みと課題はどこにありますか?
社会人チームは、長年積み重ねてきた技術力に加え、資金面でも大きな強みを持っています。
それに対して、学生チームの大きな武器は、練習に使える時間の多さです。社会人の方々は主に土日を中心に限られた時間で練習している一方、私たちは平日に週3回の練習時間を確保することができます。
この時間をどれだけ効率よく使い、初心者として入ってきたメンバー全体のレベルアップにつなげられるかが、学生チームとして勝負するうえでの大きなポイントになります。
一方で、最も大きな課題は費用面です。大規模な大道具には200万〜300万円ほど、衣装にも1人あたり約4万円の費用がかかり、演舞全体では総額800万円ほどの予算が必要になります。
その結果、メンバー1人あたり年間で数十万円の負担が生じることもあり、金銭的な理由から活動を続けることが難しくなり、途中でサークルを離れてしまうメンバーが出てしまうこともあります。

——資金面の課題に対して、企業協賛によってどのような変化がありましたか?
現在は、3社から協賛をいただいています。
いただいた資金は大道具の制作費に充てており、メンバー一人ひとりの負担を軽減できているほか、遠征費の補填にもつながっています。私たちは地域のイベントに無償で出演する機会も多く、移動にかかる費用をこれまでは自己負担していたため、この支援は、活動を続けるうえで非常に大きな支えになっています。
また、協賛による変化は資金面だけにとどまりません。
私たちのサークルは3年生の11月に引退するため、一般的な学生と比べて就職活動のスタートが遅れやすい傾向があります。よさこいに多くの時間を注いでいる分、将来に対して焦りや不安を感じる学生も少なくありません。
そのような中で、協賛企業の皆さまがサークル向けに開いてくださる独自の説明会が、社会や仕事について知る貴重なきっかけになっています。
また、100人規模の組織を動かす力や、800万円規模の予算と向き合う責任感、限られたリソースの中で成果を出すための戦略的な考え方など、よさこいを通じて培ってきた力が、社会でどのように活かせるのかを具体的に知る機会にもなっています。
——いつも応援してくださっている皆さまへメッセージをお願いします。
私たちの活動における大きなやりがいは、地域のイベントや介護施設などで演舞を披露した際に、見てくださった方から直接「良かった」という言葉をいただける瞬間です。
賞レースで結果を残すことももちろん大切ですが、それ以上に、地域の皆さまに呼んでいただき、演舞を通して元気や活力を届けられることが、私たちの活動の原動力になっています。
また、資金面でのご支援や就職活動のサポートをしてくださっている協賛企業の皆さまにも、心から感謝しています。
学生だけでは実現が難しいこと取り組みも、企業の皆さまのお力をお借りすることで、より大きな活動へと広げることができています。
これからも皆さまと協力しながら、静岡をはじめとする地域をさらに盛り上げられるよう、活動に取り組んでいきたいと考えています。