学生だけで2,000人規模へ。神戸の海辺で挑む野外フェス運営——神戸大学音学祭
神戸市の海沿いにある公園を舞台に、関西圏の大学生バンドが集う野外音楽フェスを企画・運営している「神戸音学祭」。2025年に設立され、現在は7名の幹部メンバーを中心に16名の実行委員で活動しています。
「学生の、学生による、学生のための野外フェス」をコンセプトに掲げ、企画や運営はもちろん、協賛営業や当日のPA(音響)まで、すべてを学生主体で行っています。
昨年度は2日間で約800人を動員し、今年度はさらに規模を拡大。来場者数2,000人を目標に、野外ステージの設営や出店ブースの拡充など、新たな挑戦にも取り組んでいます。
実績が少ない中で、彼らはどのように企業から協賛を集め、数千人規模のイベントを作り上げているのでしょうか。今回は、ゼロから立ち上げる中での苦労や、活動を通じて得られた成長について、代表の橋野心音汰さんと松本和沙さんに話を伺いました。

——神戸音学祭について概要を教えてください。
私たちは、「学生の、学生による、学生のための野外フェス」の開催を企画・運営しています。活動拠点は神戸市で、8月20日にリハーサル、21日に本番を実施する予定です。
このイベントの大きな特徴は、入場料・出演料をともに無料にし、関西圏の大学の軽音サークルに所属する学生たちを招き、コピーバンドによるライブを開催している点です。音楽を通じて若い世代が交流できる場を作り、神戸の音楽文化を盛り上げながら、人とのつながりを大切にしています。
現在、中心となって活動している実行委員は16名です。当日はさらに多くの人手が必要になるため、ボランティアスタッフも募集しながら、最終的には実行委員50名、出演者50名の計100名規模の体制を目指して組織を拡大しています。

——神戸音学祭はどのようにして始まったのですか?
きっかけは、前年度の委員長が大学の講義で、神戸のまちづくりやアリーナ事業を手掛ける「株式会社One Bright KOBE」の社長のお話を聞いたことでした。講義内容に感銘を受けた先輩が、「自分たちもこうしたフェスをやりたい」と思いを直接伝えたことをきっかけに、企画がスタートしました。
現在会場として使用している「TOTTEI PARK(トッテイパーク)」は、新しくできたアリーナに隣接する公園で、平日はイベント利用が少ないことから、One Bright KOBE様のご厚意で利用料を減免して頂いています。
また、イベント名である「音学祭」の「がく」の字には、音楽の「楽」ではなく、学生の「学」を使用しています。企画や運営だけでなく、当日のPA(音響)まで含め、イベントをすべて学生主体で作り上げるという私たちの想いを表しています。
——野外フェスにこだわる理由は何ですか?
神戸という港町ならではのロケーションを活かし、他にはない特別な体験を作りたいと考えているからです。神戸には「COMING KOBE(カミングコウベ)」という有名な野外フェスがありますが、私たちは、その“学生版”ともいえるイベントを目指しています。
一般的に、学生の音楽イベントはライブハウスなど屋内で開催されることが多いですが、私たちは海を背景にステージを設置し、野外で演奏できることに大きな価値があると感じています。出演者にとっても、海風を感じながら演奏する体験は特別で、強く記憶に残るものになるはずです。
私自身も昨年度は出演者として参加しましたが、その独特の雰囲気に強く魅力を感じました。「この景色をもっと多くの学生に体験してほしい」「何年も続くイベントにしていきたい」と思ったことが、運営に立候補した大きな理由です。

——今年の目標と新たな取り組みを教えてください。
今年の最大の目標は、来場者数2,000人を達成することです。昨年度は2日間で約800人の方にご来場いただきましたが、今年はさらに規模を拡大し、より多くの方に楽しんでいただけるイベントにしたいと考えています。
そのために、今年は大きく2つの新しい取り組みに挑戦します。
1つ目は、本格的な野外ステージの設営です。昨年度は予算の都合もあり、地上で演奏を行っていましたが、今年はステージを組み、フェスとしての臨場感や見栄えをより高めたいと考えています。
2つ目は、出店ブースの設置です。地域の飲食店の方々にお声がけするほか、「神戸コーヒーサークル」のような学生団体にも出店していただき、音楽だけでなく、食や交流も楽しめるイベントにしていきたいと思っています。
——資金集めはどのように行っていますか?
主な資金源は、前年度からの繰越金、クラウドファンディング、そして企業様からの協賛金です。現在は、地方創生を目的とした行政の助成金の申請も進めています。
特に、ステージ設営など野外フェスならではの部分には大きな費用がかかるため、協賛金を集めるための営業活動は欠かせません。
営業活動では、やみくもに連絡するのではなく、「神戸を盛り上げたい」「若者の音楽活動を応援したい」という想いを持ってくださりそうな、地元の中小企業や飲食店、ライブハウスを中心にアプローチしています。
また、交渉の際には、単に協賛をお願いするだけではなく、イベントの概要や強みを資料で分かりやすく説明し、「自分たちは本気で神戸を盛り上げたい」という熱意を直接伝えることを大切にしています。
その結果、地元のライブハウスの方々をはじめ、多くの方に共感していただけるようになりました。

——活動を通して成長したと感じる部分は何ですか?
最も成長を感じているのは、「挑戦する力」が身についたことです。企業への協賛営業や野外フェスの企画など、最初は未経験のことばかりで、不安も大きくありました。
しかし、先輩方が「こういう文章で連絡してみよう」「この企業にアプローチしてみよう」と具体的な進め方を示してくださったことで、一歩踏み出しやすくなりました。今では、自分から主体的に動き、新しいことに挑戦することへのハードルがかなり下がったと感じています。
また、人とのつながりを作る力も大きく成長した部分です。以前は同じサークル内の関わりが中心でしたが、フェスを通じて、地元の飲食店の方やライブハウスの店長さんなど、幅広い世代の方々と「神戸を盛り上げたい」という共通の想いでつながることができています。
生まれ育った神戸で、自分たちが主体となって大きなイベントを運営できていることは、大きな自信につながっています。
——これまでで印象的だったエピソードはありますか?
昨年度のフェス当日、想像以上に幅広い世代の方が来場してくれたことが、とても印象に残っています。友人や音楽好きの学生だけでなく、会場近くを通りかかった家族連れや小学生が興味を持って、そのままライブを見てくれました。
また、駅前でビラ配りをしていた際にも、「このバンドのコピーをやるなら見に行きたい」と言って、実際に会場まで来てくださった方がいました。自分たちの発信がきっかけで人が動いてくれたことを実感できて、とても嬉しかったです。
そして、一番印象に残っているのは、すべての演奏が終わった後に花火が打ち上がった瞬間です。最初は全く面識のなかった実行委員や出演者たちが、一緒に写真を撮ったり笑い合ったりしていて、会場全体が一体感に包まれていました。
準備期間中は、ボランティアで大変な作業もたくさんありましたが、音楽への情熱でつながった人たちが、ひとつのイベントを本気で作り上げている光景を見て、「この活動に関われて本当に良かった」と心から感じました。

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。
日頃から応援してくださっている協賛企業の皆さま、地域の皆さま、そしてイベントに関わってくださるすべての学生の皆さん、本当にありがとうございます。数多くの支えがあるからこそ、私たちはこのような大規模な野外フェスに挑戦することができています。
今年度は、来場者数2,000人という高い目標を掲げ、野外ステージの設営や出店ブースの設置など、新しい取り組みにも全力で挑戦しています。学生だけで企画・運営をやり遂げ、神戸の街を盛り上げるとともに、ご来場いただいた方々に「楽しかった、来てよかった」と思っていただけるようなフェスを作りたいと考えています。
これからも、地域の皆さまとのつながりを大切にしながら、学生らしく何事にも挑戦し続けていきます。8月の本番に向けて全力で準備を進めていますので、ぜひ当日は会場に足を運んでいただけると嬉しいです。今後とも、温かいご支援・ご協力のほどよろしくお願いいたします。