「頭はいいのに、頭の悪いプレー」を変えた組織力とは。未経験者主体で挑む1部昇格——東京大学アイスホッケー部
東京大学アイスホッケー部は、深夜帯のスケートリンクを利用して活動する、未経験者主体のチームです。限られた練習時間や人数、資金面の課題を抱えながらも、秋のリーグ戦での1部昇格を目標に掲げ、組織力を武器に戦っています。
かつて周囲から「頭はいいのに、頭の悪いプレーをする」と言われた経験をきっかけに、チームは“考えてプレーする”ことを強く意識するようになりました。経験者と未経験者が混在する環境の中で、どのように組織力を高め、勝てるチームを作っているのか。今回は、キャプテンの尾畑宏樹さんに話を伺いました。

——東京大学アイスホッケー部について概要を教えてください。
現在は、プレイヤー19名、マネージャー4名で活動しています。プレイヤーの学年別の内訳は、4年生が9名、3年生が4名、2年生が6名です。文系と理系の割合はほぼ半々で、経験者は私を含めて3名のみで、残りのメンバーは、大学に入ってから競技を始めました。
年間を通して、大きく3つの大会があります。4月から6月にかけて開催される春の大会、9月から12月に行われる秋のリーグ戦、そして12月の七大戦です。
私たちが所属しているのは、大学から競技を始めた選手が中心となるリーグに所属しています。一方で、スポーツ推薦の選手が中心となるリーグも存在しており、秋のリーグ戦ではさらに細分化され、1部から5部までに分かれる仕組みになっています。
——普段の練習スケジュールや部内の雰囲気について教えてください。
練習場所は主に2か所で行っており、氷上練習は西東京の東伏見や明治神宮外苑のスケートリンク、陸上トレーニングは大学キャンパスのグラウンドで行っています。
特徴的なのは、練習時間の遅さです。スケートリンクの利用枠が限られているため、氷上練習は週2〜3回、深夜24時以降に1時間半ほど行っています。帰宅が深夜3時や4時になることも珍しくありません。
リンクへは全員で車に乗り合わせて向かうのですが、この移動時間がチームの結束を強めています。競技について真剣に話すこともあれば、何気ない日常の話で盛り上がることもあります。練習後には、朝3時頃まで営業している牛丼屋やラーメン店にみんなで立ち寄ることも多いです。
深夜に活動するという特殊な環境だからこそ、そうした時間の中で独特の一体感が生まれています。学年関係なくフラットに接する文化があり、仲の良さはチームの大きな特徴だと思います。

——尾畑さんご自身のバックグラウンドと、大学スポーツならではの違いを教えてください。
私は小学生の頃にロシアで暮らしており、冬にできるスポーツとして、アイスホッケーを始めました。高校時代は愛知県のクラブチームでプレーし、高校3年生の7月に引退してからは、受験勉強に専念していました。
高校までと大学では、競技を取り巻く環境が大きく異なります。大学では未経験者が主体のチームになるため、一定の技術レベルに達すると、個人の力だけでは勝てないことを強く実感しました。経験者が多くいて得点を重ねられたとしても、チーム全体で守り切れなければ意味がありません。
一人ひとりの体力や技術には限界があるからこそ、大学スポーツでは組織力が非常に重要になります。全員で支え合いながら戦うことの大切さを、日々感じています。実際に昨年は全員が泥臭く走り切り、体を張って戦う総力戦で春・秋大会ともに優勝をつかみ取ることができました。
——現在のチームが抱えている課題や弱みはありますか?
一番の課題は、慢性的な人数不足です。現在は4年生が9名在籍していますが、私たちが引退すると、プレイヤーは10名ほどにまで減ってしまいます。どれだけ実力があっても、試合で交代要員が少ないと、体力面で不利になり、勝ち切ることが難しくなります。
また、金銭面の負担も大きな課題です。現在は月5000円の部費で活動していますが、近年の物価上昇に伴い、防具代やスケートリンクの貸切費用などが高騰しています。
これまではOBの方々からの支援に支えられてきましたが、今後は外部スポンサー企業にも協力を募りながら、より安定した運営体制を整え、活動の幅を広げていきたいと考えています。

——その壁を乗り越えるために、具体的にどのような工夫をしていますか?
人数不足に対しては、新入生に競技の魅力を伝え、入部につなげることに力を入れています。スケート体験には「珍しそうだから」と興味を持って参加してくれる学生も多いのですが、そこから継続的に関わってもらうために、実際の試合や練習を見学してもらう機会を設けています。競技ならではの圧倒的なスピード感や激しいコンタクトを直接体感してもらうことで、入部への動機付けにつなげています。
また、経験者と未経験者の技術差を埋めるために、1〜2学年上の先輩が指導役として後輩をサポートする体制を整えています。日頃からコミュニケーションを密に取りながら、技術面だけでなく精神面のフォローも行っています。
さらに、深夜練習が中心で全員が集まってミーティングをする時間を確保しづらいため、練習動画をYouTubeにアップロードし、コメント欄を活用して戦術の議論やフィードバックを行っています。時間や場所に縛られずに意見交換できる仕組みを作ることで、チーム全体の連携強化につなげています。
——練習の質を高め、組織力で勝つために意識していることはありますか?
入部当初、周囲の大人から「頭がいいのに、頭の悪いプレーをしている」と言われたことが強く印象に残っています。当時は、自分でパックを持って無理に仕掛けるような、個人プレー中心のスタイルだったため、そのように見られていたのだと思います。
その経験をきっかけに、「考えながらプレーする」ことをチームの強みにしようと意識するようになりました。試合中の判断だけでなく、日々の練習でも「なぜこのメニューを行うのか」「どうすれば試合で活きるのか」を考えながら取り組むことを大切にしています。特に、週4時間確保している陸上トレーニングでは、練習の質に強くこだわっています。ただ体を動かすのではなく、回復力向上を目的としたメニューメニューや、アジリティ向上を目的としたメニューなど、それぞれの練習に明確な目的を設定して取り組んでいます。
まずは自分自身が「考えて練習する姿勢」を示すことで、論理的に戦う意識をチーム全体に浸透させたいと考えています。

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。
2026年は、秋のリーグ戦での「1部昇格」という大きな目標を掲げています。1部は経験者が多く集まるレベルの高いリーグですが、私たちは組織力を武器に挑戦していきたいと考えています。
新入生の皆さん、私たちは一人ひとりが支え合いながら戦う“総力戦”のチームです。ぜひ多くの方に入部していただき、一緒に1部昇格を目指して戦ってほしいと思っています。
そして、日頃から支えてくださっているOBの皆さま、地域の皆さま、本当にありがとうございます。皆様の支えがあるからこそ、私たちは競技に全力で向き合うことができています。
これからも目標に向かって1年間全力で取り組んでいきますので、泥臭くも頭を使って戦う私たちのプレーと、学生ならではの熱量を、引き続き応援していただけますと幸いです。