「やらされる練習」から「自分たちで考える練習」へ。チームが掴んだ40年ぶりの快挙——岡山大学サッカー部
スポーツ推薦を持たない環境——それを言い訳にすることなく、学生自らが組織を動かし、進化を続けているのが岡山大学サッカー部です。創部から70年以上の歴史を持つこのチームは、近年めざましい成果を上げています。天皇杯予選で上位2枠への進出、そして40年ぶりとなる県予選決勝進出など、着実に結果を残してきました。その背景には、「仲間との親睦を深めるだけの集団」からの脱却がありました。学生自身がチームのあり方を一から見直し、組織として生まれ変わってきたのです。
今回は副主将の田村隼人さんに、組織が迎えた転換点と、彼らが描く未来についてお話を伺いました。

——貴団体について概要を教えてください。
私たちは現在、中国大学サッカーリーグで戦っており、最大の目標は1部に定着し続けることです。強豪がひしめく中で、スポーツ推薦もない環境のもと、部員一人ひとりが主体的にチームの強化に取り組んでいます。現在の部員は1年生から3年生までで63名おり、そのうち約7割が理系の学生です。
最近は目標が少しずつ形になってきていて、天皇杯の予選では14年ぶりに学生上位2枠に入ることができました。さらに、先日行われた社会人チームとの試合でも勝利し、40年ぶりに岡山県予選の決勝まで進むことができました。次はいよいよ強豪のIPU(環太平洋大学)との決勝戦です。学生の大会では大敗してしまった相手ですが、勝てば75年ぶりの優勝になるので、チーム全員で気合いを入れて準備を進めています。

——ピッチ内での練習や戦術づくりはどのように行っていますか?
1月は対人とパスに徹底的にこだわる、2月は4対2や5対3といったポゼッションに特化するなど、月ごとに明確な目標を持って練習メニューを組んでいます。
僕たちの強みは、自分たちで分析して対策を立てられることです。先日の社会人チームとの試合前には、2年生2人と3年生2人の計4人で相手の試合を90分間フルでチェックしました。相手のウィークポイントを洗い出し、「ここから攻めよう」と1週間かけて対策の練習を組んだんです。それが試合で機能して勝てた時は、自分たちのやり方に大きな自信を持てました。
——ピッチ外での新たな取り組みについて教えてください。
これまで一部のメンバーに業務が偏っていたため、役割を部署ごとに分け、3年生主導で新たな活動を進めてきました。
まずSNS運用では、他大学の発信を参考にしながら、試合の様子を投稿するだけでなく、選手コメントを丁寧に編集して掲載するなど、見せ方を工夫しました。その結果、1か月でフォロワーが120人以上増加するなど、発信の成果も見え始めています。今後は、ブログやTikTokでの発信にも挑戦していきたいと考えています。
また、スポンサー獲得については手探りの状態からのスタートだったため、強豪校である高知大学さんに直接ノウハウを伺ったほか、スポンサー獲得に力を入れている神戸大学の友人にも相談し、知見を得ました。
さらに、地域に根ざした活動にも力を入れています。3月には、私たちが地元の中高一貫校を訪問し、合同練習と進路相談会を開催しました。加えて、福岡遠征の際には現地企業の説明会に参加し、そのご縁で宿泊費をご負担いただくといった取り組みにもつながっています。

——以前はどのような組織課題を抱えていましたか?
僕たちが1、2年生だった頃は、部活動の雰囲気は、今よりもかなり緩い状態でした。練習を休んでも特に何も言われないような環境で、本気でサッカーをしたい熱量のある選手は、ラクロス部やフットサル部、あるいは社会人のクラブチームへ流れてしまう状況でした。
振り返ってみると、当時の練習メニューはずっと同じことの繰り返しで、チームとしての明確な目的が見えにくかったのだと思います。大学の部活というよりは遊びの延長のような空気があり、組織としての一体感に欠けていました。
——組織改革へと踏み切った一番の原動力は何だったのでしょうか?
根本にあったのは、自分たちが1、2年生の時に抱えていた「もっとこうすればいいのに」という強いもどかしさと危機感でした。当時は練習メニューに工夫がなく、モチベーションの低い選手が相次いで休むような状況を目の当たりにしていました。このままでは本気でサッカーに向き合えないという悔しさが、僕たちの中にずっと蓄積していたんです。
その決意を後押ししたのが、グラウンドの人工芝化工事が決まったことでした。今年の夏から工事が始まる予定で、「どうせ良い環境になるなら、それにふさわしい組織にしよう。俺らの代でチームを根本から変えてやろう」と話し合い、一気に改革へと動き出しました。人工芝化はあくまで行動を起こすきっかけでしたが、「現状への不満」を「チームを変えていく力」に変えたいという思いが、組織改革へと踏み切る原動力になりました。

——自発的な組織を作るために、どのような工夫を実践しましたか?
みんなが無理なくサッカーに向き合えるように、スケジュールの組み方を見直しました。以前は長期休みに週5日の練習をしていましたが、授業や私生活との両立が難しく、参加率に課題がありました。そこで思い切って週4日連続の練習に変更し、意図的に3日間の連続オフを設けました。さらに、罰走や罰金といった制度も廃止し、一人ひとりが自発的に練習へ足を運びたくなるような、柔軟な環境づくりを意識しました。
また、選手のアフターケアにも力を入れています。高校時代に副主将や主将を務めていた際、チーム内で衝突が起きたにもかかわらず、十分にフォローできず、チームが分裂してしまった経験がありました。
その反省を生かし、今のチームでは、練習中に厳しい要求を受けたり、モチベーションが下がっていそうな選手がいた場合、キャプテン陣4人のうち誰かがその日のうちに必ず声をかけるようにしています。練習後に話を聞いたり、一緒に昼食に行ったりしながら、「あの時の言葉にはこういう意図があったんだよ」と丁寧にコミュニケーションを取ることで、気持ちが落ち込んだままにならないよう心がけています。
——組織を動かす経験から、どのような成長を感じていますか?
人を動かし、組織をより良い方向へ導いていくことの難しさを痛感すると同時に、それが形になった時の大きな達成感も感じています。
厳しい声かけだけでは人はついてきませんし、楽しい雰囲気だけでは勝つことはできません。ランメニューのような厳しい練習を取り入れながらも、その後のアフターケアを欠かさない。そうしたバランスを意識しながらチームを前に進めていく力は、大学に入ってから大きく身についたと実感しています。
試合に勝った時はもちろんですが、初めてスポンサーを獲得できた時にも、サッカーの枠を超えた大きなやりがいを感じました。競技面だけでなく、組織づくりや周囲を巻き込む力の面でも、自分自身の成長を強く実感しています。

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。
日頃からチームを支援してくださっている皆様、感謝申し上げます。
岡山大学体育会サッカー部は、ピッチでの結果にこだわるのはもちろんですが、今年からはピッチ外の活動の幅も大きく広げています。
中高生との合同練習や進路相談、地域のボランティア活動などのイベントを通して、地域の方々の力になり、共に岡山県を盛り上げていきたいと考えています。チームとしての価値をさらに高め、皆様に応援していただけるようなクラブを目指して全力で挑戦を続けますので、これからも岡山大学サッカー部への温かいご声援をよろしくお願いいたします。