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乗船実習による主力不在。社会人との合同練習で培うフィジカルと組織力——東京海洋大学ラグビー部

東京海洋大学ラグビー部は関東大学ラグビーリーグ5部に所属し、約30名で活動しています。部員の半数以上が大学からラグビーを始めた未経験者であり、さらに海を学ぶ学生という特性上、約1ヶ月に及ぶ乗船実習により、リーグ戦期間中に主力が不在となるなど、特有の制約の中で活動しています。

そのような環境の中で、彼らはどのようにして4部昇格という目標に向き合っているのでしょうか。大敗の経験や主力不在といった課題をどのように乗り越え、限られた環境の中でチームを成長させているのか。今回は、東京海洋大学ラグビー部キャプテンの井上海凜さんに話を聞きました。

 

 

——東京海洋大学ラグビー部の概要を教えてください。

 

プレイヤーとマネージャーを合わせて、約30名で活動しています。大学院生が主力としてチームに残り、中心となって支えている点が大きな特徴です。

現在、関東大学ラグビーリーグ5部に所属しており、今年の目標は関東大学ラグビーリーグ4部への昇格です。昨年は10チーム中5位という結果だったため、今年は1位通過による昇格を目指して、日々練習に取り組んでいます。

練習は越中島キャンパスで週4日実施しており、平日の火曜日と木曜日は午前6時30分から8時30分、土日は午前9時から11時まで行っています。特に平日の早朝練習は、部員によっては始発電車で通わなければ間に合わない時間帯です。

私自身も、実家から通う場合は朝5時に起きる必要があり、継続が難しいと感じたため、現在はキャンパス近くの寮に入り、午前6時に起床して通っています。このように、生活全体をラグビー中心に組み立てながら活動しています。

 

 

——チームの強みは何ですか?

 

私たちの最大の強みは、フィジカルを活かしたフォワード陣の力強さと、15年にわたって継続している社会人チームとの合同練習にあります。

チームには未経験者が半数を占めていますが、その中で勝機を見出すため、今年は体格に優れた選手が揃うフォワード陣を中心に、モールやスクラムの強化に注力しています。特に、フィジカルを活かしたプレーは私たちの大きな武器です。

さらに、その強みをより高いレベルに引き上げているのが、毎週土曜日に実施している社会人チームとの合同練習です。合同練習を行っている社会人チームは、もともと東京電力のラグビー部であり、東日本大震災の際に練習グラウンドを失ったことをきっかけに、当時の監督が東京海洋大学の練習場所を提供したことで交流が始まりました。それ以来、15年間にわたり継続して関係を築いています。

合同練習では、フルバックを務める私自身も含め、選手一人ひとりが社会人の熟練選手から、ポジショニングをはじめとする専門的な指導を受けています。加えて、最後には15対15の試合形式で実践練習を行うことができるため、初心者が多い私たちにとって、競技力の向上に直結する非常に貴重な環境となっています。

 

——活動を続けるうえで、どのような壁に直面していますか?

 

最大の壁は、海洋大学特有の「乗船実習」により、リーグ戦期間中に主力メンバーが約1か月間不在となることです。海洋工学部の学生の多くは船員を目指しており、この実習は必修であるため避けることができません。

また、生物系の学科では、研究の一環として毎日魚の世話を行う必要があり、研究室に拘束される部員もいます。このように、海を専門的に学ぶ大学ならではの学業上の制約が、チーム編成に影響を与えています。

加えて、競技面では初心者が多いことによる課題もあります。タックルなどのコンタクトプレーに対する恐怖心や、ルール理解の不足が、試合での安定したパフォーマンスを妨げる要因となっています。

このように、学業による時間的・物理的な制約と、競技経験の差による心理的な課題の両方を抱えています。

その中でも、ゴール前まで攻め込みながらトライを取りきれない決定力不足を、いかに克服するかが現在の大きな課題です。

 

 

——チームに起きた変化のきっかけを教えてください。

 

ライバル視していた国際武道大学に敗れた悔しさが、試合ごとに課題を意識して取り組むようになる大きなきっかけとなりました。

昨秋には、格上である東京学芸大学に100点以上の差をつけられて敗れ、その実力差に「ここまで差があるのか」と強い衝撃を受けました。しかし、チームが本当に変わったのは、その後の国際武道大学戦です。前半は互角に戦えたものの、後半に突き放されて敗れたことで、全員が「勝ちたい」という悔しさを強く持つようになりました。

この経験をきっかけに、現在はただ試合や練習をこなすのではなく、「今日はゴール前で取り切る」といったように、その日ごとに目標を決めて取り組むようになっています。また、練習後には上級生が下級生を連れて、プロチームの試合を観戦しに行くこともあります。実際のプレーから学ぼうとするなど、自主的な取り組みも増えています。

 

——部活動を通して学んだことを教えてください。

 

誰からも強制されない環境だからこそ、自ら考えて行動する「自律」の大切さを学びました。

大学生活は高校時代と異なり、「筋トレをしろ」「しっかり食事をとれ」といった管理はありません。やるかどうかはすべて自分次第で、意識が低ければ簡単に手を抜くこともできてしまいます。

そのような環境の中で、4部昇格という目標に向けて、一人ひとりが自分を律しながら、トレーニングや食事に向き合えるかどうかが問われています。特に海洋大学という専門性の高い環境で学業と競技を両立する私たちにとって、日常生活を自分で管理する力は欠かせません。

そしてその力は、ラグビーという厳しい競技に取り組む中でこそ身につくものであり、将来にもつながる大きな財産だと考えています。

 

 

——キャプテンとして、チームをまとめるうえで意識していることを教えてください。

 

言葉で指示を出すだけでなく、誰よりも早くグラウンドに行き、率先して荷物を持つなど、行動で示すことを大切にしています。

この姿勢を強く意識するようになったのは、昨年の創部100周年記念行事がきっかけです。神戸大学との定期戦における交通費の支援や、就職活動に関するサポートなど、OBの方々から多くの支援を受けていることを改めて実感し、その期待に応える責任を強く感じるようになりました。

今年のチームは、個々の主体性にまだばらつきがありますが、キャプテンとして自分がまず細かな行動から率先して実行し、基準を示すことで、チーム全体の意識と行動レベルを引き上げたいと考えています。

 

 

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。

 

支援してくださる皆様には、「4部昇格」という結果で恩返しできるよう、チーム一丸となって取り組んでいます。また、これから入部を検討する新入生には、チームの雰囲気やラグビーの楽しさを伝えていきたいと考えています。OBの方々や関係者の皆様、日頃より多大なるご支援をいただき、誠にありがとうございます。今年こそは勝利にこだわり、目標を達成することで良い報告ができるよう努めてまいります。

また、ラグビーに興味を持ってくれている学生の皆さんへ。競技に対して「怖い」というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、私たちのチームは上下関係が厳しい環境ではなく、学年を越えて交流のある和気あいあいとした雰囲気です。

まずはラグビーの楽しさを知ってもらうきっかけとして、ぜひ一度グラウンドに足を運んでみてください。グラウンドで一緒に活動できることを楽しみにしています。