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資金0から年間7000部を発行。80名の学生が挑むメディア運営の裏側——神戸大学KooBee

大学の正門付近で、多くの新入生が思わず手にとる、一冊の分厚い冊子があります。120ページにわたるそのフリーペーパーには、神戸大学周辺の飲食店やサークル情報、教授へのインタビューなど、学生生活に必要な情報が幅広く掲載されています。発行部数は年間7000部。特筆すべきは、制作費のすべてを部員自らの営業活動で賄い、大学からの資金援助を一切受けずに運営している点です。「神大生による神大生のためのメディア」を掲げるKooBee(クービー)は、どのようにして組織を構築し、どのような価値を届けようとしているのか。代表の糸川朝陽さんに、お話を伺いました。

 

——貴団体について概要を教えてください。

 

私たちは「神大生による神大生のためのフリーペーパー制作サークル」として活動しています。主な媒体は、年に一度発行する120ページの冊子「KooBee」と、毎週更新されるWebメディア「WeeBee」の2つです。

組織は3学年で約80名が所属しています。営業部、編集部、クリエイティブ部、カメラ部、PR部、映像部の6部署に分かれ、学生組織でありながら、企業に近い体制で運営しているのが特徴です。

私たちは大学から資金援助を一切受けておらず、広告収益のみで活動を維持しています。営業部が地元の飲食店や企業に足を運び、広告枠を提案することで制作費を確保します。

入部者の9割は未経験者ですが、15年かけて蓄積されたノウハウを継承し、技術面においても妥協のない制作を追求しています。

 

 

——学生組織でありながら、なぜプロ意識を徹底しているのでしょうか?

 

私たちの活動が、多くの「信頼」と「責任」の上に成り立っているからです。企業の担当者と対等にお仕事をさせていただく以上、学生という立場に甘えることは許されないと考えています。

一例として、広告制作では企業の方々と何度も打ち合わせを重ねます。私が1年生の時に初めて担当したショッピングモールの広告では、先方からキャッチコピーの細かなニュアンスについて何度も修正の依頼をいただきました。言葉一つで集客の結果が変わるため、責任の重さを強く実感しました。

また、私たちは新入生にとっての「確かな指針」でありたいと考えています。大学生活という新しい環境に不安を抱く学生に対し、私たちのメディアが信頼できる情報源となり、行動のきっかけを作ることです。その役割を果たすためには、質の高いコンテンツの提供が不可欠だと考えています。

 

 

——組織の運営において、どのような壁に直面しましたか?

 

私たちが直面する大きな壁となっているのは、制作過程における「批評」のプロセスです。KooBeeでは、作成した文章やデザインに対し、全部員で徹底的にフィードバックを行う文化があります。

特に編集部では、執筆した原稿をLINE上で共有し、先輩や同期から意見を受けます。私自身、1年生の時に初めて書いたキャッチコピーが厳しい批評を受け、何が「良い文章」なのか、どうすれば読者に届くのかが分からなくなり、執筆が行き詰まってしまったことがありました。80人の組織で一つの作品を作り上げる以上、個人のこだわりと客観的なクオリティを両立させることは容易ではありません。

 

——その困難をどのようにして解決したのでしょうか?

 

行き詰まっていた私を支えたのは、2学年上の先輩からの助言でした。「テクニックはあくまで手段にすぎない。取材を通して最も伝えたい核心は、お前にしか表現できない価値だ。最後は批評を自分なりに解釈し、自分の言葉でまとめなさい」と言われました。

この言葉をきっかけに、私は考え方が大きく変わりました。

批評をそのまま受け入れるのではなく、本質を捉えたうえで自分の意志として再構築することが重要だと気づいたのです。

それ以降は、読み手が求める情報と、自分が伝えたい価値の両方を意識しながら、無理に飾らず、分かりやすく伝えることを心がけるようになりました。

現在は後輩に対しても、単なる修正にとどまらず、「何を大切にしたいのか」を対話を通じて引き出すようにしています。本人が納得したうえで制作に向き合えるよう、サポートしています。

 

——活動を通じて、どのような価値観が生まれましたか?

 

私たちは「和の輪」というスローガンを掲げています。これは、調和を意味する「和」と、繋がりの広がりを意味する「輪」を組み合わせた言葉です。組織内の結束はもちろん、外部の方々との繋がりを大切にし、その輪を広げていくことを目指しています。

一度広告を掲載していただいた企業に対しては、全力で集客やPRに貢献します。その誠実な取り組みが「来年もKooBeeに任せたい」という継続的な信頼に繋がると考えています。

また、情報発信における私たちが大切にしている考え方は「誰にでも分かりやすく、かつ独自の視点がある表現」を追求することです。私個人の原体験になりますが、かつて野球部の主将を務めていた際、言葉の選び方一つで組織の動きが変わることを学びました。メディア運営においても、難しい言葉に頼らずに情報の深みを届けることを重視しています。そのために、広告コピーや古典作品などから常に学び、発信の精度を向上させる努力を続けています。

 

 

——今後の展望と、組織として目指す姿を教えてください。

 

今後は、従来の「紙」と「Web」に加え、「動画」による発信を強化していきます。2年前に新設した映像部を中心に、YouTubeなどを活用して多角的に情報を届ける体制を整えつつあります。

私たちの目標は、KooBeeが神大生や地域の方々にとって、日常の選択において欠かせない存在になることでを目指しています。「KooBeeで紹介されていた店に行こう」「WeeBeeで授業情報を確認しよう」という会話が日常的に交わされるような、実用性と親しみやすさを兼ね備えたメディアであり続けたいと考えています。

既存の繋がりを大切にしながら、新しい縁を広げていく。そうして「和の輪」を拡大させ、神戸という街に貢献できる組織を目指します。

 

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。

 

日頃より広告を掲載してくださる飲食店や企業の皆様のご支援のおかげで、私たちは毎年活動を継続できています。単なる広告媒体に留まらず、皆様のビジネスに実利をもたらすパートナーとして認められるよう、今後も質の高い誌面作りに邁進します。

そして新入生の皆さん。新しい環境には戸惑いもあるかと思いますが、困ったときはぜひ私たちの冊子やWebサイトを活用してください。私たちが総力を挙げて制作したコンテンツが、皆さんの大学生活をより充実させるための一助となれば幸いです。