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「どんな経験にも意味がある。点と点が繋がる瞬間を信じて。」エンジェル投資家が、若者に託す言葉——エンジェル投資家ー島田大介

かつては挑戦する側として、いまは挑戦を支える側として。スタートアップの世界で20年以上にわたり挑戦を続けてきた、有限会社インターリンクス代表でエンジェル投資家の島田大介さん。

起業やM&Aなど数々の経験を経て、現在の島田さんが選んだ次のステージは「起業家の挑戦を応援する側」です。エンジェル投資家として起業家として、そして一人の挑戦者として“ワクワクすること”を軸に人生を切り拓いてきた島田さんに、これまでの歩みと、次世代へ託す想いを伺いました。

 

——まずは島田さんの現在のお仕事について教えてください。

 

現在は、エンジェル投資家としてスタートアップの支援を行うことを軸に、複数の活動をしています。主な役割は、創業初期のスタートアップに事業を成長させるための資金を提供しながら、経営や資金調達、事業づくりの壁打ち相手をしたりしてます。他にも、飲食店の経営や、JFL所属のサッカークラブ「クリアソン新宿」のパートナーとしての活動、ラジオ番組のパーソナリティなど、「ワクワクすること」を軸に様々な業界の素敵な皆さんと色々なプロジェクトに関わっています。活動の全てに共通しているのは、“頑張っている人や挑戦を応援すること”。これまでスタートアップの世界で多くの経験をさせてもらった分、次はそれを次世代に還元したいという思いで活動しています。

 

 

——「ワクワク」への情熱は、どのように形づくられてきたのでしょうか?

 

20年以上、起業家としてスタートアップの現場に身を置いてきた中で、「人生は一度きり」だと強く感じるようになったことがきっかけです。私はこれまで自らの起業やM&A、創業に携わった会社の上場やTOB(上場会社のM&A)も経験してきましたが、それらは決して楽な道ではありませんでした。むしろ、大変だったり辛かったりする経験の方が多かったかもしれません。しかし振り返ると「挑戦したこと」には一度も後悔していません。その経験から、ハードルが高く難しそうに見えても、なんか面白そうだと思ったことには思い切って飛び込んでチャレンジした方がいいと考えるようになりました。無難な選択ではなく、「大変かもしれないけどワクワクする選択をする」ことを大事にしています。それは、他人に説明できるかどうかではなく、自分自身が腹落ちできるかどうか、という基準です。

 

──起業当時は、どのような事業を立ち上げられたのでしょうか?

 

2003年に創業したのは、飲食店向けのITサービスを提供する会社です。具体的には、スマートフォンアプリを活用した集客や注文、ポイント管理などを一つの共通基盤として提供する仕組みを作っていました。

飲食店ごとにゼロからアプリを開発するのは大変ですが、ベースとなるシステムを共通化し、デザインだけを変えることで、効率よく導入できるようにしたんです。

当時はまだスマホも今ほど普及していない時代でしたが、「これから必ず来る」と信じて取り組んでいました。

 

 

——M&Aを経た今、当時の決断をどのように振り返っていますか?

 

2023年に会社をM&Aで譲渡しました。直後は寂しい気持ちもありましたが、20年間、自分にできることはやり切りましたので、後悔とかは全くなく、今はビジネス人生後半戦を思いっきり楽しんでいます。2003年に起業してから約20年、事業に真剣に向き合い、さまざまな修羅場を仲間と一緒に乗り越えてきました。その集大成として、M&Aという形でもっと事業を成長させていただけるパートナーである会社にバトンを渡せたのは、とても前向きな決断だったと思っています。売却後は、「自分が何者か」に縛られずに動けるようになりました。スタートアップ経営者という肩書きから一度離れたことで、より幅広い視野で様々な業界で活躍する人や企業、挑戦する気持ちに向き合えるようになった気がします。

 

——エンジェル投資家として、具体的にどのような支援をされているのでしょうか?

 

エンジェル投資家として行っている支援内容は、資金提供だけではありません。そもそもエンジェル投資家は、基本的に創業直後の「シード期」と言われるスタートアップに対して、株式と引き換えに資金を投資し、事業の立ち上げから成長までを伴走する役割があります。このフェーズのスタートアップは、まだプロダクトが本当に市場に受け入れられるかも分からない状態で「あるのは情熱とアイデアだけ」ということもあります。その段階だからこそ、ただ資金を提供するだけでなく、事業をブラッシュアップするための壁打ち相手になったり、資金調達の戦略を起業家と一緒に考えたり、そのスタートアップに適切な投資家や事業パートナーを紹介することもありますし、「へこんでるんで元気をつけてください」と言った相談に対して一緒に飲みに行って「大変だけど頑張ろう!」と鼓舞することもあります。

投資ですので当然リターンを出す必要がありますが、そのリターンによって次のスタートアップの支援に循環させていきたいと思っています。応援したいという気持ちを軸にしつつ、持続的にスタートアップを応援し続けるためには、投資として成立させることが重要だと考えています。資金提供にとどまらず、事業や資金調達の壁打ち相手となり、時にはプライベートの悩みにも寄り添いながら、企業の成長のプロセスに伴走する。

それが、私のエンジェル投資家としてのスタンスです。

 

 

——投資先を選ぶ際、最も重視しているポイントは何ですか?

 

投資先を選ぶ際に、私が最も重視しているのは「人」そのものです。プロダクトやマーケットの成長性、事業計画を見る投資家も多いですが、私はそれ以上に、起業家や経営チームの“人”としての力を見ています。想定外が当たり前の世界だからこそ、困難な局面でもやり切れるかどうか、その覚悟と姿勢が大事だなと思っています。組織崩壊、立て続けに起こる顧客の解約、売掛債権の回収が不能になる、じわじわと減るキャッシュ。起業は仲間と共に達成した時の喜びや感動も半端なく大きいですが、胃が痛くなる様な精神をすり減らす局面も多々発生します。そのときに重要なのは「最後までやり切れるのか」「困難な局面でも諦めずに立ち向かえるのか」という点です。私は、その原動力になるのが、事業を始めた原体験やストーリー、そして情熱だと考えています。

また、人を巻き込む力も非常に重要なポイントです。優秀なメンバーの採用、投資家からの資金調達、顧客への営業など、スタートアップは常に誰かを巻き込み続けなければ前に進めません。その力は、その人の言葉や立ち振る舞い、人生経験の中から自然とにじみ出てくるものだと感じています。最終的にはやはりその事業に熱狂し周りを巻き込む「人」の力。だからこそ、私は人に投資することを何より大切にしています。

 

——印象に残っている投資事例を教えてください。

 

印象に残っている投資事例はいくつもありますが、象徴的なものはDtoC(Direct to Consumer)で、ある商品を手がけるスタートアップへの投資です。実はこの起業家、最初に立ち上げた事業は全く別の事業でしたが、その事業はうまくいかず、半年ほどでクローズする結果になったんです。その事業のピッチを初めて聞いた時、正直「事業が成功する可能性は極めて低い」と思いました。それでも私が応援をし続けたのは、事業内容ではなく「人」に惹かれていたから。彼は、苦労しながら育ててくれた母親に恩返しをしたいという強い原体験を持ち、「必ず上場する」という覚悟を語っていました。その想いの強さと、人間力にこそ投資する価値があると感じたんです。

事業をクローズした後、彼はすぐに次の挑戦として別の事業に取り組み始めました。特に印象的だったのは、PDCAを回すスピードの速さです。ユーザーの反応を見てはすぐに改善し、打ち手を次々に試していく。その姿勢がチーム全体にも波及し、結果として事業は急成長しました。今ではテレビでのCMも行い、多くの人に知られるブランドへと育っています。

この事例を通して改めて感じたのは、「事業に投資した」のではなく、「熱い情熱を持ち、やり切る力を持った人に投資した」ということです。困難に直面しても諦めず、学び続け、行動し続ける人は、必ず次の道を切り拓く。そう確信できた、忘れられない投資事例です。

 

——起業家人生で最も大きな壁は何でしたか?

 

一番の壁は、個人情報漏洩のトラブルに直面し対応したことです。元社員による不正で、大量の個人情報が流出し、損害賠償請求やユーザー対応に追われました。当時は半年間、朝から深夜までクレーム対応を続ける日々で、精神的にも追い込まれていたことを覚えています。正直、心が折れそうになった瞬間も何度もありました。しかし、「ここで逃げたら終わりだ」と思い、メンバー全員で向き合い続け、乗り越えた経験は、チームとして成長し、結束が強くなった瞬間でもあります。

 

——苦しい状況をどう乗り越えてきたのでしょうか?

 

私が意識していたのは、辛い時には遠い未来を見ないことです。つまり「半年後どうなるか」ではなく、「今日一日を全力でやり切る」。それだけを考えていました。たとえばジョギングをしている時に、途中で苦しくなったら「次の電柱まで頑張る」と決めて走る。そして電柱にたどり着いたら、また「次の電柱まで!」と走り続けることがあるのですが、それと似た感覚です。個人情報が漏洩した時も本当に辛い辛い毎日でしたが、“今日頑張ろう”を積み重ねていたら、気づいた時には半年、1年が経っていました。

もう一つは、「この経験はきっと自分を強くする」と信じることです。失敗や修羅場は、後から必ず武器になります。

 

——最後に、学生や若い世代へメッセージをお願いします。

 

大切なのは、人生が動き出す“タイミング”を逃さないことです。きっかけは、人との出会いや、本や映画との出会いなど、日常のあちこちに散らばっています。無理に夢を持とうとしたり、最初から起業を目指そうとしなくても大丈夫。まずは小さくてもいいので、いろいろな場所に顔を出して、さまざまな経験をしてみてください。

また社会人になれば、就職や配属など思い通りにならないこともあるかもしれません。しかし、まずは1年、2年と決めて、その環境で全力で取り組んでみてほしいです。思い切りやることで初めて見えてくる世界がありますし、頑張っている姿は必ず誰かが見ていて、次のチャンスや出会いにつながっていきます。

決して自分の思い通りになっていない状況だったとしても、まずはそこで全力を尽くすと、その経験は自分自身の成長の糧となり、後の人生で「あのときがあったから」と点と点が繋がる瞬間につながっていく強く感じています。

 

 

島田大介
株式会社インサイドコア 代表取締役

慶應大学卒業後、双日、投資会社やネットエイジ勤務を経て2003年にインサイトコアを創業。2023年にオプトにM&Aでバイアウトし、現在は、エンジェル投資活動を展開(投資先:35社)。東証スタンダードに上場したネットマーケティングの創業にも携わり、2018年に社外取締役に就任。米国PEファンドであるベインキャピタルへのTOBでは特別委員として交渉を担当。居酒屋「OMA」オーナー。JFL所属サッカーチーム「クリアソン新宿」パートナー。FMラジオパーソナリティー。