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「感覚」を「物理」で解読する。未経験8割の部員が3年半で化ける理由——東京大学運動会ゴルフ部

「東大ゴルフ部」と聞くと、幼い頃からゴルフを続けてきた経験者の集団を想像するかもしれません。

しかし実際には、部員の約8割が大学からゴルフを始めた未経験者です。

しかも彼らは、高額なプレー代をまかなうため、全員がキャディのアルバイトをしながら競技を続けています。さらに、プロのスイング理論を上級生1名と下級生数名をグループにして一貫して指導する「バディ制度」を導入し、未経験からでも短期間で成長できる仕組みを作り上げてきました。

東京大学運動会ゴルフ部では、どのようにして3年半という限られた時間を上達のために使っているのでしょうか。

そこには、「自律」と「論理」を徹底する独自の組織文化がありました。

 

——東京大学ゴルフ部の概要を教えてください

 

私たちは関東学生ゴルフ連盟に所属しており、男子はCリーグからBリーグへの昇格、女子はEリーグからDリーグへの再昇格を目標に活動しています。部員数は約40名。その大半が、大学入学後に「新しいことに挑戦したい」と入部した未経験者です。

全体練習は週に1回、調布、成城等の練習場で行っています。ただ、私たちの実力を左右するのは、それ以外の6日間の過ごし方です。強制される練習が少ない環境だからこそ、各自の熱量がそのまま実力差として表れます。

レギュラーを目指す部員の多くは、ほぼ毎日練習場に通っています。中には、練習環境を優先して練習場の隣に住み、大学まで1時間かけて通学している部員もいます。それほどまでに、ゴルフという競技に真剣に向き合っている組織です。

 

 

——未経験者が短期間で成長できる理由は何ですか?

 

私たちは、ゴルフをできるだけ「論理」で理解することを大切にしています。その象徴が、プロコーチである井上透監督の指導と、部内で運用している「バディ制度」です。

バディ制度では、上級生がゴルフ経験の少ない後輩をサポートします。ただ感覚で教えるのではなく、スイングの仕組みを物理的な原理から説明することを重視しています。

例えば、「クラブ軌道をインサイドから入れるとフェースが開きやすくなる」といった原理を理解することで、「なぜミスが起きるのか」が明確になります。初心者が陥りがちな「理由が分からないまま練習を続ける」という状態を避けることができるのです。

こうした環境があることで、未経験からでも効率的に成長できる仕組みが整っています。

 

——未経験からレギュラーになるまでの成長過程を教えてください。

 

未経験からゴルフを始める部員にとって、最初の大きな壁は「道具を使いこなす身体感覚」を身につけることです。学業と両立しながら、部の練習や自主練、長期休み中の合宿などを経て少しずつ「ボールにフェースを当てる感覚」を養っていきます。

抽象的な上達ではなく、特定のクラブを身体の一部のように扱える感覚を掴むこと。こうした経験を積み重ねることで、未経験者でも確実に実力を伸ばしていきます。

実際に、入部してから2年でレギュラーに定着し、卒部の頃にはベストスコアを74まで伸ばした先輩もいます。その存在は、「正しい努力を続ければ必ず結果につながる」という部全体の自信にもなっています。

 

 

——ゴルフ部の活動費はどのように工面していますか?

 

ゴルフには多くの費用がかかります。私たちはその課題を、自分たちの行動で解決しています。その代表的な取り組みが、全部員が行っているキャディのアルバイトです。

提携しているゴルフ場でキャディとして働きながら活動資金を稼ぎ、業務終了後にはコースで練習させてもらうこともあります。これは単なるアルバイトではなく、競技環境を自分たちで確保するための重要な取り組みになっています。

さらに、2024年度からはスポンサー営業にも取り組み、企業との契約を締結しました。活動費をご支援いただくことで、競技に集中できる環境づくりを進めています。

 

——個人競技のゴルフで、チームとして戦う意味は何ですか?

 

私たちは個人競技をしていますが、チームとしての結束力を大切にしています。それを支えているのは、意外にも移動中の車内会話です。都内からゴルフ場までは往復で4〜5時間かかることも珍しくありませんが、この長い移動時間が、学年や性別といった属性を超えた交流を生み出します。

車内では、「西班」「南班」といった居住地で分けられた班ごとのメンバーで移動することが多く、ゴルフに関する真剣な議論から、日常の他愛ない話までさまざまな会話が交わされます。そうした時間の中で、強い信頼関係が生まれていきます。

練習場では、それぞれが黙々とボールを打ち、自分の課題と向き合う時間が続きます。しかし一歩車内に入れば、そこは十人十色の個性が交わる場所です。オンとオフの切り替えがあるからこそ、リーグ戦という極限の場面でも「仲間のために一打を削り出す」という団体戦の強さが生まれます。

男女がそれぞれ独立したリーグで戦いながらも、同じ熱量で高め合えるのは、こうした濃密な時間を共有しているからだと思います。

 

 

——東大ゴルフ部で得られる経験とは何でしょうか?

 

東大ゴルフ部での経験を通して身につくのは、目標から逆算して自分の行動を設計する「自律」の力だと思います。

週1回の全体練習以外の時間をどう使うか。自分のスイングの課題は何か。それを解決するためにどんな練習をするか。すべてを自分自身で考え、決断し、実行していきます。

未経験から経験者と互角に戦えるレベルまで成長するためには、試行錯誤を重ねながらPDCAサイクルを回し続ける必要があります。また、また、キャディの仕事ではお客様と4時間以上ご一緒し、会話しながらプレーをサポートします。これはコミュニケーション能力や気配りを身につける機会にもなっています。

こうした経験は、卒業後にどの分野へ進んだとしても、自分で考え行動する力として必ず活きてくると確信しています。

 

——応援してくださる方々へメッセージをお願いします。

 

日頃からご支援いただいているスポンサーの皆様、そして練習環境を支えてくださっているゴルフ場関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。私たちが競技に集中できているのは、多くの方々の支えがあってこそだと日々感じています。

私たちは、部員の多くが大学からゴルフを始めた未経験者です。その中で、キャディのアルバイトやスポンサー活動など、自分たちの力で環境を整えながら競技に向き合ってきました。このように多方面でのご協力を得て、工夫して部を強化してきた歴史があるからこそ、自分たちで考え、行動しながらチームを作っていく文化が根付いていると感じています。

これからも、支えてくださる方々への感謝を忘れず、男子Cリーグ優勝、女子Dリーグ再昇格という目標に向かって努力を続けていきます。今後とも東京大学運動会ゴルフ部を温かく見守っていただけますと幸いです。