8つの学科の力を、ひとつの媒体に。——日本大学芸術学部(日芸)Unit!編集部
日本大学芸術学部の学生によって立ち上げられた出版サークル「Unit!」。2024年に創設されたばかりの団体ながら、学祭での雑誌発行や外部クリエイターへの取材など、着実に活動の幅を広げています。
未経験から始まった雑誌制作。手探りでの立ち上げ、アポ取りの苦労、そして“制作と人をつなげる”という理念に込めた思いとは。
今回は、編集長を務める井出涼太さんに、Unit!の立ち上げ背景や活動のリアル、そしてこの経験が未来にどうつながっていくのかを伺いました。

——まず、貴団体の概要を教えてください。
Unit!は、日本大学芸術学部(日芸)の学生を中心に活動している出版サークルです。年に1〜2回、学祭などのタイミングで『Unit!』という雑誌を発行しています。活動内容は、日芸内外を問わず、クリエイティブな活動をしている方に取材を行い、その活動や背景を記事にまとめて届けることです。活動理念として大切にしているのは、「制作と人をつなげる」こと。作品やコンテンツをつくっている人と、それを知りたい人をつなぐ架け橋のような存在でありたいと考えています。取材だけでなく、SNSで写真や小説を募集して誌面に掲載するなど、読者参加型の企画も行っています。

——井出さんがUnit!を立ち上げたきっかけを教えてください。
大学1年生だった2024年6月に、Unit!を立ち上げました。立ち上げのきっかけは、異なる専門分野を持つ学生たちで、一つの作品を作る場を作りたいと思ったからです。当時、日芸では授業で本をつくる課題はあったのですが、文芸学科内で「雑誌をつくるサークル」はありませんでした。日芸には、デザイン学科や写真学科、放送学科など、合計8つの学科があります。私は文芸学科で、小説などを書く学科に所属しています。そうした中で、「大きな雑誌という一つの作品をみんなでつくれないか」と考えたことが、Unit!の原型になりました。
雑誌という形を選んだ理由も、学科横断で取り組みやすいと感じたからです。映像や演劇などは特定の学科の専門性が強く出ますが、雑誌であれば、取材は放送学科、撮影は写真学科、デザインはデザイン学科、執筆は文芸学科というように、それぞれの強みを分担しながら一つにまとめることができます。想像しただけで私自身が「やりたい」と感じ、友人や知り合いにひたすら声をかけて回ったことから、Unit!は始まりました。
——立ち上げ当初の苦労はありましたか?
一番大変だったのは、そもそも雑誌の作り方が分からなかったことです。高校時代に文芸部誌のような簡単な冊子をつくった経験はありましたが、本格的な雑誌制作の技術はありませんでした。だからこそ、完全に手探りの状態からスタートしました。
まず取り組んだのは、大学の授業でDTP(本をつくる技術)を学び、制作の基礎を身につけることです。しかし、基礎知識だけでは足りない部分も多かったので、市販の雑誌を参考にしながら、「自分たちはどういう誌面にしたいのか」をメンバーと共有し、一つずつ形にしていきました。また、完成した記事はみんなで見せ合い、意見を出し合いながら改善を重ねていきました。
工夫した点は、できる限り情報を共有すること、そして対面で集まることです。オンラインでも進捗報告はできますが、実際の色味や紙のサイズ感などは伝わりづらく、深い議論になりにくい難しさがありました。対面で実物を見ながら話すことで、意見も出やすく、結果的に効率も良かったと感じています。編集部内では、取材、ライター、デザイン、校正などいくつかの部署に分かれ、希望を聞きながら役割を分担しています。全員が未経験からのスタートだったからこそ、一つずつ積み上げていくことを大切にしてきました。

——活動の中で、井出さんはどのような役割を担っていますか?
私は、編集長として雑誌全体の方針を決める役割を担っています。まず「今号のテーマ」という大枠を僕が提示し、その上でメンバーと企画を話し合います。取材したい団体や個人を出し合い、「テーマと合っているか」「読者に届く内容か」といった視点で調整していきます。場合によっては次号に回したり、SNSやWeb記事での展開に切り替えたりすることもあります。
また、記事のデザインや全体のスケジュール管理も担当しています。複数の企画が同時進行するため、進行を俯瞰しながら調整していく必要があるからです。さらに、取材のアポ取りも自ら行っています。返信がなかなか来ないこともありますが、何度も連絡を重ねながら取材につなげていくこともあります。
——印象的だった取材はありますか?
第三号では、「赤の他人の証明写真」というガチャガチャを考案された方に取材しました。そのアイデアを思いついたきっかけや、どのようにコンテンツを展開していったのかを伺いました。SNSやテレビでも取り上げられている方ですが、メディアでは語られていない裏話や本当の動機まで聞くことができたのは印象に残っています。Unit!では、作品そのものだけでなく、制作の動機や苦労、嬉しかったことなど、裏側にフォーカスしています。

——Unit!ならではの強みは何だと思いますか?
強みを挙げるとすれば、日芸という環境そのものだと思います。日芸では、メディアや表現領域を専門的に学ぶ授業があり、メンバー一人ひとりが何らかの専門性を持っています。そのため、雑誌制作においても、それぞれの強みを活かせる点が大きな特徴だと感じています。たとえば、第三号で展開したガチャガチャ企画は、写真学科のメンバーが撮影を担当しました。光の調整や編集といった専門的な知識があるからこそ、クオリティの高いビジュアルを短期間で仕上げることができました。
またデザイン学科のメンバーが、学祭でコラボする形で販売した、ガチャガチャの筐体前に貼る商品説明の台紙を制作してくれました。いわゆる“本物らしい”レイアウトを再現できたのも、専門性があったからこそです。「やろう」と決めてから実際に形にするまでが早い——2〜3週間ほどで完成させることができた瞬発力は、専門分野を学ぶ学生が集まっているからこそ発揮できる、Unit!ならではの強みだと思っています。
——現在の課題はありますか?
今の課題として感じているのは、メンバーの学年間の偏りです。現在は16名で活動していますが、1年生が3名しかおらず、下級生が少ない状況です。(2026年2月時点)そのため、自分が卒業した後もUnit!を続けてほしいと思っていますが、このままでは、将来的に運営が立ち行かなくなる可能性があるとも感じています。
だからこそ、今後は雑誌制作の技術やノウハウをきちんと資料化していきたいと考えています。デザインの話だけでなく、企画の立て方やメンバー間の調整、取材時の日程管理なども含めて、運営の背景となるスキルを整理して残していきたいです。また、メンバー募集の際には、未経験者でも入れる団体であることをもっと伝えていきたいとも思っています。実際、メンバーのほとんどは雑誌をつくった経験がありません。それでも半年あれば一冊を形にできる。そのことをこれから入ってくる新入生にも伝えていきたいです。
——Unit!での活動を通して、どんな力が身につくと感じますか?
まず身につくのは、コミュニケーション能力です。日芸にはさまざまな学科があり、普段あまり関わらない領域の学生と一緒に制作を進めます。その中で、役割分担をしたり、意見をすり合わせたりする機会が多いので、人と協働する力は自然と鍛えられると感じています。
また、雑誌制作は一つの記事だけをつくれば終わりではありません。複数の企画を並行して進めたり、次号の構想を考えたりと、常に全体を見ながら動く必要があります。そのため、スケジュールを組み立てる力や、企画を段階的に形にしていく力も身につくと思います。

——最後にメッセージをお願いします。
私たちUnit!は、日本大学芸術学部の学生のみで構成されている出版サークルです。日本でも数少ない芸術系大学で培った、それぞれの専門的なスキルを組み合わせて、一つの雑誌をつくっている点が魅力です。SNSが発達した今でも、表現活動には届く範囲の限界があります。まだ知られていない才能や、隠れたクリエイターの方も多くおり、Unit!はそうした方々を見つけ、紹介し、読者へ届けることを目的に活動しています。
もしこの取り組みに共感してくださる企業様や社会人の方がいらっしゃいましたら、ご協力いただけますと幸いです。学生主体の活動ではありますが、表現を届ける場を継続していくために、応援してくださる方々と一緒に歩んでいけたら嬉しいです。
Unit!の活動は、単に雑誌をつくることにとどまりません。異なる専門性を持つ学生同士が対話し、調整し、一つの目標に向かって進む。そのプロセスそのものが、大きな学びにつながっています。「制作と人をつなげる」という理念のもとに積み重ねてきた経験は、きっと社会に出たあとも活きていくはずです。Unit!がこれからどんな才能を見つけ、どんな物語を届けていくのか。今後の活動や、次号の発行も楽しみにしています。
執筆:青木千奈(株式会社Koti)