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才能ではなく「4年間の努力」と「圧倒的な組織力」で勝つ。——神戸大学アイスホッケー部

氷の上に立つことすらままならない状態から、わずか数年で時速40キロを超えるシュートを放つ選手へと成長する。

神戸大学アイスホッケー部は、部員の約9割が大学から競技を始めた未経験者集団です。

同部は、幼少期から競技を続けてきた経験者が揃う私立大学の強豪校に対し、「未経験者でもどうすれば勝てるのか」という問いに向き合い続けてきました。15万円の防具費用、月々2万円の維持費、そして深夜のリンク練習。

活動費用や練習環境など決して恵まれているとは言えない条件の中で、戦略的なトレーニングと組織づくりを重ねながら、関西2部リーグ優勝、そして全国大会進出を目指しています。今回は、そんな神戸大学アイスホッケー部の挑戦と試行錯誤について伺いました。

 

 

——神戸大学アイスホッケー部の概要について教えてください。

 

現在はプレイヤー25名、マネージャー6名の計31名で活動しています。主戦場は関西学生アイスホッケーリーグの2部です。

1部リーグには推薦入学の経験者が多く在籍する大学が並びますが、私たちは大学から競技を始めたメンバーが中心のチームです。その中で2部リーグ1位を取り、1部昇格を目標に掲げています。

練習は神戸市内のリンクや西宮のアイスアリーナを使用し、週3回の氷上練習を行っています。さらに今年度からは週1回の陸上トレーニングも取り入れ、体力やフィジカル面の強化にも取り組んでいます。

 

 

——未経験者が大半を占める中で、技術的な向上をどのように実現していますか?

 

アイスホッケーは、陸上での身体能力がそのまま活きるスポーツではありません。どれだけ足が速くても、氷の上では誰もが「立つことすら難しい」状態からスタートします。

しかし、その分、全員が同じスタートラインに立つことになります。努力した分だけ成長がはっきりと実感できる点は、この競技の大きな魅力だと思います。

指導面では、主将一人に負担を集中させるのではなく、外部コーチを招いて専門的なフィードバックを受ける体制を整えています。

また、限られた氷上練習を補うため、先輩が後輩を昼間の一般営業のリンクへ連れて行くことがあります。自分たちのプライベートの時間を削ってでも、マンツーマンで居残り特訓のように滑り方を教え込みます。そうした積み重ねによって、一人ひとりの課題を早い段階で改善できるようにしています。

 

 

——深夜練習や活動費用の負担といった環境的な課題を、どのように捉えていますか?

 

私たちは、そうした環境も競技の一部だと捉えています。限られた時間をどう使うかを常に考えながら、効率的な練習を意識してきました。

最近では神戸市内に新しいリンクが設立され、練習時間や移動面の負担も少しずつ改善されてきています。以前よりも競技に集中できる環境が整いつつあります。

環境面でのハードルは決して低くありません。防具一式で約15万円、月々の部費も約2万円ほど必要になります。以前は神戸市内に通年リンクがなく、深夜練習が当たり前でした。客観的に見れば厳しい環境ですが、私たちは「あえてここを選んで飛び込んできた」という自負を持っています。普通の学生生活ではなく、あえて逆境のある環境で本気になりたい。そんな「面白い個性」を持った仲間たちが集まっていることが、私たちの強みの一つです。

「逆境を楽しむマインド」は今も変わらずに残っています。

 

 

——主力選手が引退した現状において、どのような戦略で勝利を目指していますか?

 

昨年度は、点を量産していた経験者だった主力二人の活躍もあり、2部リーグ2位という結果を残せました。しかし、その絶対的なエースたちが引退した今年度、他大学からは「神戸大は戦力が落ちた」と見られているのが現実です。

チームが掲げたスローガンは「虎視眈々(こしたんたん)」です。個人のスキルで劣るなら、25名全員の「走力」で勝負します。

土曜日の陸上トレーニングで瞬発力や持久力を強化し、人数の多さを活かした積極的なライン交代とフィジカルで相手からパックを奪う戦い方を徹底しています。個人の才能に頼るのではなく、組織としての運動量と戦術で格上の相手に挑もうとしています。

 

——後輩たちのモチベーションを維持するために、どのような工夫をしていますか?

 

ベンチ入りできる22名の枠をめぐり、どうしてもメンバー外が出てしまうという課題があります。

そこで私たちは、チーム運営の面でも全員に役割を与えることで、チームへの当事者意識を高めています。

例えば、会計業務を後輩にも担当してもらったり、陸上トレーニングのメニューを3年生に考えてもらったりするなど、チーム運営の役割を分担しています。そうすることで、一人ひとりがチームの勝敗に関わっているという実感を持てるようにしています。

また、1・2年生のみが出場する試合を意図的に設定し、早い段階で実戦経験を積める機会も作っています。こうした小さな成功体験を積み重ねることで、「自分たちがこのチームを動かしている」という実感が生まれ、組織全体の底上げにつながっていると感じています。

 

 

——部員間の関係構築において、神戸大学ならではの文化はありますか?

 

部として、複数の車を所有・維持する文化があります。深夜の移動に欠かせないこの車は、単なる移動手段ではありません。練習後に車で食事へ向かい、先輩が後輩にご飯を奢ることも、長く受け継がれてきた文化の一つです。こうした食事の時間を重ねることで、自然と学年間の距離が縮まり、気軽に会話できる関係が生まれていきます。

その結果、氷上でも後輩が先輩に遠慮せず戦術的な意見を述べたり、時には食ってかかるような姿勢を持つことができます。この関係性の近さが、試合中の素早い連携を支える基盤になっています。

 

 

——アイスホッケーでの経験は、社会でどのような価値につながると感じていますか?

 

「何もできない状態」からスタートし、戦略を立てて困難を乗り越えていくプロセスそのものが、私たちの大きな学びだと感じています。

高額な費用や特殊な練習時間、実力差のある相手との対戦など、アイスホッケー部の活動には多くの壁があります。しかし、その状況を言い訳にするのではなく、「どうすれば勝てるのか」を考え続けてきました。

そうした課題に向き合う姿勢や、泥臭く努力を積み重ねる力は、社会に出ても確実に活きるものだと思っています。

 

——最後に、応援してくださる方々へメッセージをお願いします。

 

今年度は、昨年度あと一歩で届かなかった「全国大会セカンドディビジョン出場」を明確な目標に据えています。主力二人の経験者が引退し、戦力的に昨年度より劣っているという評価もありますが、私たちはその状況をひっくり返すために今、必死にミーティングを重ね、新しいトレーニングに取り組んでいます。

私たちは、高額な用具費や深夜の練習環境といった多くのハードルを抱えながらも、学生主体で目標に向かって日々練習に励んでいます。そんな「一番応援しがいのあるチーム」になれるよう、日々精進して練習に取り組んでいきます。

もし、私たちの活動を応援してくださる企業様がいらっしゃれば、私たちはその支援に対して、結果や成長という形できちんと「恩返し」をしたいと考えています。困難を成長に変え、逆境を楽しみながら戦う私たちの姿を、ぜひ見守っていただければ幸いです。