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身体能力ではなく、思考で勝つ。理系学生が主力でも、私立強豪と戦える理由。——大阪大学男子バスケットボール部

大阪大学体育会男子バスケットボール部、通称「Tridents(トライデンツ)」。1974年の創部以来、「学問との両立」を掲げ、私立の強豪がひしめく関西学生リーグ2部という厳しい舞台で戦い続けてきました。特に現在の新4年生は、プレイヤーの多くが、多忙を極める工学部に在籍しています。実験や課題に追われる日々の中で、なぜ私たちは「勝負」を続けるのか。昨シーズン、3部降格の危機という試練において見せた執念と、阪大生らしい緻密な戦略の裏側に迫ります。

 

 

——まずは部の概要について教えてください。

 

私たちは「Tridents」というチーム名で活動している、大阪大学体育会男子バスケットボール部です。豊中キャンパスと吹田キャンパスの体育館を拠点に、現在は約30名の部員が所属しています。私たちの最大の特徴は、スポーツ推薦枠を持たない国立大学でありながら、私立大学の強豪が集う2部リーグに所属していることです。部員の構成もユニークで、新4回生は、プレイヤー6名のうち5名が工学部の理系学生です。1974年の創部以来、脈々と受け継がれてきた「文武両道」の精神を大切にしながら、限られた練習時間と設備の中で、いかに効率よく勝利を掴むかを追求し続けています。

 

 

——理系学生が多数を占める組織で、なぜ「文武両道」を徹底できるのですか?

 

私たちは、限られた時間を徹底的に使い切ることで「文武両道」を実現しています。大阪大学では「単位が取りにくい」と言われることもありますが、特に実験や課題が多い工学部の部員にとって、時間は、最も貴重な資源です。だからこそ、それを言い訳にするのではなく「すきま時間の活用」を徹底しています。

通学の電車内で予習・復習を行い、練習と授業の合間には図書館に立ち寄って課題を進めるなど、短い時間でも無駄にしない習慣が根付いています。こうした日常の積み重ねが、コート上での集中力にもつながっています。

練習開始の夕方6時前まではリラックスして過ごしていますが、6時になるとすぐに気持ちを切り替えて練習に集中します。限られた時間を無駄にしないよう、一つひとつのメニューに集中して取り組むことを大切にしています。こうした時間の使い方が、文武両道を続けるための土台になっていると感じています。

 

——チームが直面した最大の試練と、そこから得た「残留」以上の価値とは何ですか?

 

私たちにとって最大の試練は、昨シーズンに入れ替え戦に回ることが決まったことです。神戸大学との一戦で勝てば自力残留が決まる状況でしたが、中盤までリードしながらも延長戦の末に逆転負けを喫しました。チームとして大きなショックを受けた試合でした。

しかし、その経験から私たちが得たのは「すぐに次へ向けて行動する力」でした。試合の2日後には、次の対戦相手のスカウティング(敵情分析)を部員たちが自主的に始めていました。悔しさにとどまるのではなく、次の試合に勝つために何が必要かを考え、準備を進めていきました。

その積み重ねがあったからこそ、入れ替え戦で京都教育大学に勝利し、2部残留を果たすことができました。あの経験を通して得た、逆境でもチームとして前に進み続ける力は、私たちにとって大きな財産になっています。

 

 

——身体能力で勝る私立強豪校に対し、どのような戦略で対抗しているのですか?

 

私たちは、戦術と分析を徹底することで対抗しています。自分たちが身体能力で勝っているとは考えていないからこそ、「頭を使うバスケット」を大切にしています。

多くのチームが数パターンの戦術で試合を進める中、私たちはボツになったものも含めて10種類以上のセットプレーを用意しています。相手の守り方の特徴を分析し、どのタイミングで誰が動けばズレが生まれるのかを考えながら戦術を組み立てています。

また、練習前には、その日の重点項目を「前から当たるディフェンス」や「リバウンドの徹底」など、具体的なテーマに絞って共有しています。ただ「頑張る」のではなく、数字やプレー内容に落とし込みながら取り組むことが、私たちの大きな強みになっています。

 

——学生主体でチームを運営する中で、どのような組織文化が生まれていますか?

 

私たちのチームでは、一人ひとりが役割を持って組織を運営する文化が生まれています。選手がただプレーするだけではなく、会計や遠征のサポート、ホームページの運営など、それぞれがチームを支える役割を担っています。

指導体制についても、昨年まで一緒にプレーしていた大学院生の先輩がコーチを務めています。そのため、選手と指導者の距離が近く、意見を交わしやすい環境があります。

コーチからの指示を受けるだけでなく、選手側から「ここはこう変えたい」と意見を伝えることもあります。練習メニューについても話し合いながら調整し、チームとしてより良い形を探していきます。

こうした双方向のコミュニケーションがあることで、チーム全体の当事者意識が高まり、組織としての強さにつながっていると感じています。

 

 

——現在、チーム運営においてどのような課題に直面していますか?

 

現在、私たちが最も大きな課題として感じているのは、運営体制の維持です。かつて7名いたマネージャーは、留学や退部が重なり、現在マネージャーは34名でチーム運営を支えています。そのため、一人ひとりの負担が大きくなっており、新入生の勧誘を強化する必要があります。

また、国立大学であるため資金面でも常に工夫が求められます。私立大学のような潤沢な資金があるわけではないため、会計担当を中心にスポンサー企業との交渉や、OB・OGの方々への寄付のお願いを行いながら、チーム運営を続けています。

こうした多くの方々の支えがあって、私たちは活動を続けることができています。そのことを常に意識しながら、日々の練習や試合に取り組んでいます。

 

——卒業後に社会へ出た時、この「Tridents」での経験はどのように活きると感じていますか?

 

私たちは、このチームでの経験を通して、プレッシャーのかかる状況でも冷静に考え、行動する力を身につけてきたと感じています。例えば入れ替え戦のような厳しい状況でも、感情に流されるのではなく、相手の特徴を分析し、対策を考え、実行するというプロセスを大切にしてきました。

こうした経験は、社会に出てから困難な課題に向き合う場面でも生きると考えています。実際に、先輩方もこの体育会での経験を強みに、それぞれの進路で活躍されています。

また、私たちは競技だけでなく、組織運営や資金管理などにも学生主体で取り組んできました。目標に向かってチームで考え、行動する姿勢は、どのような環境でも活かせる力だと思っています。

 

——いつも応援してくださっている方々へのメッセージをお願いします。

 

日頃より、大阪大学男子バスケットボール部Tridentsを温かくご支援いただき、誠にありがとうございます。私たちは、スポンサー企業の皆さまや、これまでチームを支えてくださったOB・OGの皆様のご支援があってこそ活動を続けることができています。

今シーズンは、2部上位進出という目標に挑戦しています。資金面や環境面でさまざまな制約はありますが、それを言い訳にせず、日々の練習と試合に真摯に取り組んでいきたいと考えています。

これからも応援してくださる皆様への感謝の気持ちを忘れず、チーム一丸となって努力を続けていきます。今後ともご声援のほど、よろしくお願いいたします。