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「4ヶ月の雪」をどう「勝つための思考」に変えたか。——小樽商科大学ラクロス部

小樽商科大学男子ラクロス部、通称「DAHLIA SNAKES(ダリアスネイクス)」。かつて練習場に蛇が出たことからその名がついたというユニークな歴史を持つチームですが、現在の彼らは、創部史上初となる全道2位を掴み取るほどの高いモチベーションを持っています。

メンバーは全員が、大学から競技を始めた未経験者。それぞれ異なる背景を持って集まった学生たちが、なぜ週4回の練習だけでなく、毎日のようにミーティングを重ねる「本気のチーム」になれたのでしょうか。主将の小野匠翔さんと副主将の田代煌裕さんの言葉から、限られた環境を自分たちの強みに変えていくための独自の取り組みについて伺いました。

 

 

——小樽商科大学男子ラクロス部とは、どのような組織なのですか?

 

私たちは、小樽商科大学を拠点に週4回活動している体育会部活動です。現在、4年生まで合わせて約30名が所属しています。人数は決して多くありませんが、その分、学年を越えた連携が非常に密であり、全員が互いの成長を支えあうチームです。

最大の特徴は、全員が大学入学後に競技を始めた「未経験者」であることです。バスケットボール、サッカー、テニス、あるいは文化系出身者など、さまざまな競技経験を持つ学生が集まり、2009年の設立以来、「全道優勝・全国大会出場」という高い目標を掲げて活動しています。

 

——組織運営においてのチームとしてのこだわりはありますか?

 

僕たちが最も重視しているのは「コミュニケーションの質と密度」です。

練習メニューをこなすだけでなく、ポジションごとに詳細な戦術確認を行うオンラインミーティングを定例化しています。少人数組織ゆえに、一人の妥協がチーム全体の成否を左右します。そのため、学年の壁を越えて意見を言い合える環境を維持しつつ、共通の目的については妥協しない姿勢を貫いています。

また、「凡事徹底し、応援される勝者に」という理念を形にするため、地域貢献活動にも注力しています。札幌市の市民体育館等での子どもたちへのラクロス指導などを通じ、学外との接点を大切にしています。フィールド外での振る舞いが、最終的に自分たちの力として返ってくると感じています。

 

 

——大学生として直面した「壁」があるそうですね。詳しく教えてください。

 

ラクロスは、全員が同じスタートラインから始まる競技だからこそ、最初は純粋な楽しさを動機に活動できます。しかし、本気で勝利を目指そうとした瞬間、個々の意識の違いが課題として浮き彫りになりました。

入部当初は「大学生活を充実させたい」という思いが先行し、熱量が必ずしも高くなかった学生も存在しました。僕たち自身も、最初から今のような規律を持っていたわけではありません。しかし、強豪校との実力差を痛感し、現状のままでは決して勝利に届かない現実に直面しました。

特に、新入生を指導する上級生との間に生じる熱量の温度差は、チーム運営の課題でした。この差を埋めるため、私たちはプレー中のみならず、練習前後や私生活においても積極的に対話を重ね、意見を共有する文化を育んできました。議論を尽くし、葛藤を分かち合うことで、個々の意識を「全国大会出場」という一つの目的に集約させてきたのです。

 

 

——練習環境も情報もない逆境で、具体的にどう動き、どう議論したのですか?

 

北海道のチームにとって、冬の活動制限は大きな課題です。12月から3月までの約4ヶ月間、屋外グラウンドは積雪により完全に使用できなくなります。この期間、私たちは体育館や札幌市内の屋内施設を自ら予約し、活動を継続しています。

多額の施設利用料や遠征費、そして高価な防具代など、学生の経済的負担は決して軽くありません。私たちは全員が学業とアルバイトを両立し、自らの手で活動資金を捻出しています。

また、戦術情報の中心が関東にあるという「情報格差」に対しても、主体的に動きました。SNSやYouTubeを駆使し、海外や関東のトップレベルのプレーを徹底的に分析しています。「環境がないからできない」と諦めるのではなく、雪で外に出られない時間を「戦術を考える時間」だと捉えるようにしています。動画を見て研究したり、戦術を話し合ったり、自ら情報を集めて強くなろうとする姿勢こそが、私たちの組織としての強みになっています。

 

——「勝てるチーム」へと脱皮した、変化の兆しを教えてください。

 

転換点は、一昨年のリーグ戦において、創部史上初となる決勝戦進出を果たしたことです。結果は敗北でしたが、あの舞台で味わった緊張感、そして周囲からの期待、フィールドから見た景色が、チームの意識を大きく変えました。「再びあの舞台に立ち、今度こそ勝利する」という明確な意志が、チームの共通目標となりました。

現在、私たちは「凡事徹底」という指針を大切にしています。遅刻をしない、道具の準備を率先して行う、挨拶を徹底する。一見ラクロスの技術とは無関係に見える日常のルールこそが、試合での粘りや、周囲からの信頼に繋がると考えています。練習後の集合では、一人ひとりの姿勢に対して厳しく問い直すこともあります。

 

 

——活動を通じて得た、社会でも通用する「一生モノの学び」とは何ですか?

 

僕たちが得たものは、目標から逆算して課題を解決していく「思考のプロセス」です。単に練習をこなすのではなく、目標達成のために何が不足しているかを考え、実行し、改善する——このサイクルを4年間繰り返す経験は、社会に出ても活かせる力だと感じています。

また、小樽商科大学男子ラクロス部は、卒業後も強固な絆で結ばれています。毎年開催されるOB戦や、OB・OGによる就活相談会などは、僕たちの誇るべき伝統です。実体験に基づくアドバイスをくれる先輩方の存在は、現役部員にとって大きな指針となっています。

学生主体でゼロから組織を運営してきた経験、そして卒業後も続く温かいコミュニティ。これらは、僕たちがこの部活動を通じて得た、かけがえのない財産です。

 

——共に歩むスポンサー企業や社会へ、メッセージを届けていただけますか?

 

日頃より私たちを支えてくださっている保護者の皆様、OB・OGの皆様、そしてスポンサー企業の皆様。私たちが今、大好きなラクロスに全力で打ち込めているのは、間違いなく皆様の温かいご支援があるからです。心から感謝申し上げます。

雪国の厳しい環境や限られた予算など、自分たちだけではどうにもできない壁もありますが、私たちはそれを知恵とチームワークで前向きに乗り越えていきたいと思っています。いただいたご支援を、ただ受け取るだけで終わらせるのではなく、私たちの成長や勝利という形で、皆様に「応援してよかった」と思っていただくことが、私たちの責任だと考えています。

今年の目標は、悲願である全国大会への出場です。私たちが勝利を目指して努力する姿を通じて、小樽の街や支えてくださる皆様に、少しでも元気や勇気を届けられたら嬉しいです。これからも感謝の気持ちを忘れず、小樽商科大ラクロス部の新しい歴史を作るために全力で取り組み続けます。