“週9回の練習”と“週5日の合宿生活”を続ける本気の理由——名古屋大学漕艇部
名古屋大学漕艇部は、1911年創部のボート部です。活動拠点は名古屋市中川区の庄内川で、現在は学部生37名、院生9名が所属し、週9回の練習と週5日の合宿生活を続けています。
朝は4時半に起きて練習し、授業に出て、夕方また艇を出す毎日です。決して楽な生活ではありませんが、それでも続けているのは、どうしても勝ちたい相手がいるからです。あと一歩届かなかったレースの悔しさが、今も強く心に残っています。
その数秒を縮めるために、練習量だけでなく、生活や組織の在り方まで見直しています。なぜそこまで本気で取り組むのか、副将の加藤稔之典さんにお話を伺いました。

——名古屋大学漕艇部とは、どのような団体ですか?
名古屋大学漕艇部は、1911年創部の歴史あるボート部です。活動拠点は名古屋市中川区・庄内川で、現在は学部生37名、院生9名が所属し、文系と理系の比率が3:7と学部も多様です。4年生は9月のインカレを区切りに引退し、そこから新体制が始まります。
特徴的なのは、週9回の練習と週5日の合宿生活です。練習形態は以下の通りです。
月曜日 オフ
火曜日 朝:水上練習 午後:陸トレーニング(ウエイト、エルゴ※など)
水曜日 朝:水上練習 午後:陸トレーニング(ウエイト、エルゴなど)
木曜日 朝:水上練習
金曜日 午後:陸トレーニング(ウエイト、エルゴなど)
土曜日 朝:水上練習 午後:水上練習
日曜日 朝:水上練習
※エルゴ:ローイングエルゴメーターというボートの漕ぐ動作を再現したローイングマシン
未経験から始める部員が多い中で、インカレでは男子ダブルスカル7位入賞(2024・2025年)など、全国の舞台で結果を残してきました。
厳しい練習と共同生活を通して、日常そのものを競技に向けて整えていく。庄内川の水面の上で、一本一本のストロークに集中しながら、勝利を目指して活動しています。

——週9回の練習はかなりハードですね。もう少し教えてください。
朝は4時から4時半の間に起きます。まだ外は真っ暗で、庄内川の水面も静まり返っています。その中で艇を出し、朝練を終えてから授業に向かい、夕方また練習をします。週9回の練習と週5日の合宿生活は、決して楽ではありません。遊ぶ時間も限られますし、体も常に疲れています。それでも続けているのは、本気で勝ちたい相手がいるからです。
私たちの一番の大きな目標は、全国大会であるインカレで結果を残すことです。他にも大阪大学や名古屋工業大学との対校戦には力を入れています。特に阪大戦では、あと少し届かなかった悔しさを何度も味わってきました。
ボートは8人の動きが少しでもずれると進みません。誰かのコンディションが落ちれば、艇全体が重くなります。だからこそ、睡眠や食事、日々の過ごし方まで含めて整えます。生活を犠牲にしているのではなく、勝つために必要な選択を重ねてきた結果が今の生活です。悔しさを知っているからこそ、私たちは生活の多くをボートに充てています。
——名阪戦で味わった悔しさから、チームとしてどう変化しましたか?
大阪大学との対校戦では、ゴールの瞬間まで勝敗が分からないレースになりました。結果は、1秒差での敗北です。2000mを全力で漕ぎ切った末の、わずかな差でした。艇を降りたとき、正直すぐには現実を受け止められませんでした。あと数本、あと一押しで変わっていたかもしれないという悔しさが残りました。
名阪戦の対校エイトは数年敗北が続いていたこともあり、その雪辱を晴らすために全力で準備したつもりでした。
その経験を踏まえ、今は練習の「精度」により重点を置いています。

——練習後はどのように振り返りを実践していますか?
私たちは、感覚だけで練習を終わらせません。毎回の練習後には必ずミーティングを行い、「今日の一本は何が良くて、何がずれていたのか」を具体的に言葉にします。うまくいかなかったときも、「疲れていた」で終わらせず、脚の押し出しやリズムのズレなど原因を分解します。
話した内容はLINEノートにまとめ、全員で共有します。翌日の練習前には、それを踏まえて目標を設定します。例えば、「スタート3本揃える」にとどまらず、一漕ぎ(ストローク)の中でどこをそろえるのか、その際にはどこの体の動きを意識するのかまで、お互いに会話を重ねて次に繋げられるようにします。
名阪戦での0.6秒差も、こうした積み重ねでどう差を埋めるかを考えています。感情だけで終わらせず、言葉と行動で改善しています。
——“週5日の合宿生活”の中での信頼関係の築き方について教えてください。
私たちは週5日、合宿所で生活しています。大部屋での共同生活ですが、練習でぶつかったり、意見が合わなかったりすることもあります。でも、そこで終わらせないことを、今の幹部たちは特に大切にしています。
例えば、夜にみんなでしりとりを1時間続けたこともあります。クリスマスには艇にLEDライトをつけて、練習後にささやかなイベントを開きました。食事の席をシャッフルして、普段あまり話さない人と話す機会をつくることもあります。小さな工夫ですが、意外と効果があります。
一番大事にしているのは、「嫌なまま終わらせない」ことです。合宿生活では常に向き合う必要があります。
だからこそ、話し合いをします。納得いくまで意見をぶつけることもあります。感情がぶつかり合うこともあります。
9人で艇に乗る以上、遠慮は結果に直結します。だからこそ生活の中から信頼を積み重ねています。同じ屋根の下で過ごす時間が、水上でのパフォーマンスに直結するためです。
——今シーズンのスローガン「挑戦」に込めた意味は何ですか?
強い相手に勝つという意味だけではなく、自分の限界に一歩踏み込むこと、そしてチームとして一段上の基準に引き上げることを指しています。
例えば、きつい練習の終盤で「ここまででいい」と思ってしまう瞬間があります。そのときに、もう一本踏み込めるかどうかが勝利へのカギになります。スタートの精度が少し乱れたときに、「まあいいか」で終わらせないなど、小さな場面での選択こそが、私たちにとっての挑戦です。
また、挑戦は競技面だけではありません。近年、部員数が減ってきている中でどう戦うのか。新人をどう育て、チームとしての力をどう底上げしていくのか。合宿生活の中でどんな雰囲気をつくるのか。そして、目の前の課題から逃げずに向き合い続けられるかどうか。そうした組織としての在り方そのものにも挑戦しています。

——応援してくださる方や企業に、何を伝えたいですか?
私たちは、決して自分たちの力だけで活動できているわけではありません。艇友会総会で話を聞いてくださるOB・OGの方々や、試合前に連絡をくださる先輩方の存在が、日々の練習の支えになっています。そうした応援があるからこそ、「この歴史を自分たちの代で止めたくない」と強く思えます。
ボートは、艇の整備や遠征などにも多くの費用がかかる競技です。1艇につき約1,000万円規模の設備投資が必要になることもあり、決して小さな負担ではありません。
だからこそ、支えてくださる方の存在があって初めて、私たちは安心して水上に立つことができています。その環境が当たり前ではないことを、常に感じています。
正直、楽な環境ではありません。それでも、庄内川で朝一番に艇を出せるのは、支えてくださる方がいるからです。名古屋工業大学との対校戦、大阪大学との対校戦、そしてインカレ。ひとつでも多く勝ち星を届けられるよう、私たちは本気で取り組み続けます。
まだまだ発展途上のチームですが、これからも応援していただけると嬉しいです。結果で恩返しできるよう、地道な挑戦を続けていきます。