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「日本一価値を創出するチームになる」学生の手でつくる、価値が循環する組織——一橋大学ア式蹴球部

一橋大学ア式蹴球部は、100年以上の歴史を持つ伝統あるサッカー部です。その一方で、組織運営や事業活動にも本気で向き合い、「学生主体で価値を創出する組織」を掲げて活動しています。

今回は、一橋大学ア式蹴球部の事業本部長である髙本直希さんにお話を伺い、部の概要や特徴的な組織体制、事業活動に力を入れる理由、そしてチームが描く未来像について詳しく伺いました。

 

 

——部の概要について教えてください。

 

私たち一橋大学ア式蹴球部は、1922年に設立された100年以上の歴史を持つ伝統あるサッカー部です。「ア式蹴球部」という名称は、サッカーが日本に伝わった当初の呼び方に由来しており、長い歴史の中で受け継がれてきました。現在は小平キャンパスを拠点に活動しており、東京都2部リーグに所属しています。日々の練習や公式戦を通して競技力の向上を目指す一方で、単なる“サッカー部”にとどまらず、組織運営や事業活動にも力を入れている点が大きな特徴です。部員は選手だけでなく、マネージャーや競技スタッフ、フロントスタッフなど多様な役割で構成されており、「学生主体で価値を創出する組織」を掲げて活動しています。伝統を大切にしながらも、時代に合わせて進化し続けています。

 

——選手以外にも多くの“スタッフ”がいると伺いました。メンバーの特徴を教えてください。

 

部の大きな特徴が、選手以外の“スタッフ”が多いことです。全体の構成としては、選手が約6割、スタッフが約4割を占めます。スタッフには、マネージャーや競技スタッフ、フロントスタッフなどさまざまな役割があり、それぞれが専門性を持って部を支えています。練習や試合を支えるだけでなく、データ分析や広報、スポンサー対応、集客施策など、社会人組織に近い形で役割分担をしています。

特徴的なのは、「サッカーが好き」という気持ちを軸にしながらも、必ずしもプレーすることだけが関わり方ではないという点です。スポーツビジネスや組織運営に興味がある学生、将来起業やマネジメントに挑戦したい学生など、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっています。それぞれが自分の強みを生かしながら、一つのチームとして価値を最大化しようとしているのが、部の大きな魅力です。

 

 

——「ユニット制」という組織体制について教えてください。

 

私たちは、組織運営を効率的かつ主体的に進めるために「ユニット制」を採用しています。大きく分けて、総務本部・強化本部・事業本部の3つのユニットがあり、それぞれが役割と責任を持って活動しています。総務本部は、部全体の運営を支える基盤的な役割を担います。スケジュール管理や内部ルールの整備、メンバー間の調整など、組織が円滑に回るための土台をつくるユニットです。強化本部は、競技面に直結するユニットで、チーム強化や練習環境の整備、選手の成長を支える取り組みを中心に進めています。事業本部は、スポンサー対応や集客施策、イベント企画などを通じて収益とファンづくりを担うユニットで、部が自分たちの力で運営できる状態(=自走)を支える重要な役割を果たしています。

このユニット制の特徴は、選手が競技だけに専念するのではなく、事業や運営にも関わる「兼任構造」にあります。競技と組織運営を切り離さず、一人ひとりが部全体を自分事として捉えることで、組織としての強さを高めています。学生主体でありながら、社会人組織に近い意思決定と責任感を育てられる点が、ユニット制ならではの特徴です。

 

——事業活動に力を入れている理由を教えてください。

 

私たちが事業活動に力を入れている理由は、「自分たちの力で部を成り立たせ、競技力向上につなげたい」という強い意識があるからです。国公立大学という特性上、大学からの金銭的な支援は限られており、活動を続けるためにはOBの方々の支援や、自分たちで生み出す収益に頼らざるを得ない現実があります。その中で、「支援されるだけの部活」ではなく、「自ら価値を生み出し、循環させる組織でありたい」という考えが根付いていきました。事業活動を通じて得た収益を、練習環境の整備やチーム強化に再投資することで、競技面の成長にも直結させています。実際に事業本部は立ち上がってから5〜6年と、比較的歴史は浅いですが、売上は毎年2〜3倍のペースで成長しています。KGIとしては「収益」と「集客」の両立を掲げており、単にお金を稼ぐだけでなく、どれだけ人を巻き込めたかも重視しています。

 

——チームとしての最終的な目標は何ですか?

 

チームとして掲げている最終的な目標は、「日本一価値を創出する学生組織になること」です。これは単にサッカーで勝つことや、リーグ昇格といった競技面だけを指しているわけではありません。競技力の向上はもちろん大前提としながら、その過程でどれだけ多くの人や地域、企業に価値を届けられるかを重視しています。競技面では、東京都1部リーグでの昇格・上位定着、そして将来的にはリーグ優勝を目指しています。一方で、それと同じくらい重要なのが、組織としての在り方です。選手・スタッフ一人ひとりが主体的に考え、行動し、事業や集客、地域連携などを通じて部の価値を高めていく。その結果「一橋大学ア式蹴球部があることで人が集まり、応援したくなる空間が生まれる」状態をつくりたいと考えています。設立から120年を迎える2041年を一つの節目として、競技・組織・事業のすべてにおいて高いレベルを実現し、学生部活の枠を超えたモデルケースになること。それが、私たちが目指している最終的なゴールです。

 

 

 ——集客施策では、どんな工夫をしているのでしょうか?

 

集客施策で意識しているのは、「サッカーを観に来てもらう」ことだけを目的にしないことです。試合そのものに加えて、“来る理由”や“来て楽しい体験”をどうつくるかを重視しています。具体的には、毎週実施しているサッカー教室(スクール事業)を1つの導線として組み合わせています。そうすることで、選手の家族「だけでなく」、地域の方をはじめとした多様なステークホルダーの方々が自然と足を運んでくれる流れが生まれます。また、サッカーに詳しくない人でも楽しめるように、企画性のある試合運営やコンテンツづくりにも力を入れています。

大学の施設を使う上での制約も多い中、学内だけで完結させるのではなく、地域と連携した外部開催や、地域イベントへの参加にも挑戦しています。「どうすれば人が集まるか」だけでなく、「どうすればまた来たいと思ってもらえるか」を軸に考えているのが特徴です。結果として、観戦者数そのものだけでなく、部の活動を応援してくれる“ファン”が少しずつ増えてきている実感があります。集客は数字を追うものでもありますが、それ以上に、人との関係性を積み重ねることが大切だと考えています。

 

——地域密着を大切にしている理由を教えてください。

 

地域密着を大切にしている理由は、私たち一橋大学ア式蹴球部が「地域の中に存在しているチーム」だと強く意識しているからです。大学の部活動は、キャンパスの中だけで完結するものではなく、日々の活動は地域の方々の理解や支えの上に成り立っています。だからこそ、応援される存在である以前に、地域の一員でありたいと考えています。また、国立・小平エリアは人とのつながりを大切にする文化が根付いている地域です。試合会場の使用やイベントの開催一つをとっても、地域の協力がなければ実現できません。そうした環境の中で活動する以上、「ただ使わせてもらう」のではなく、地域に価値を返していく姿勢が必要だと思っています。

地域密着の取り組みは、集客や事業という側面だけが目的ではありません。子どもたちにサッカーを身近に感じてもらうことや、地域の方が試合を楽しみにしてくれる関係性を築くことは、結果的に部の存在意義を高めることにつながります。「この街に一橋大学ア式蹴球部があってよかった」と思ってもらえる状態をつくることが、私たちの理想です。部に関わる選手・スタッフ・地域・企業、すべての人が同じ空間で熱狂できる関係性を築くこと。それが結果的にチームの力にもなり、長期的に見て最も強い組織になると考えています。

 

——協賛企業とは、どんな関係を築きたいですか?

 

私たちが協賛企業の皆さまと築きたいのは、単なる「スポンサーと被協賛者」という関係ではありません。お金を出していただく代わりに露出を提供する、という一方通行の関係ではなく、同じ方向を向いて一緒に挑戦できるパートナーでありたいと考えています。私たちは、「日本一価値を創出する学生組織」を目指しています。その過程で行っている事業活動や地域連携、集客施策は、企業の皆さまにとっても新しい実験やチャレンジの場になり得るものだと思っています。たとえば、学生ならではの視点での企画づくりや、地域を巻き込んだ取り組みなどは、企業側にとっても学びや発見があるはずです。また、協賛企業を「支えてくれる存在」としてだけでなく、部に関わる人々をつなぐ存在としても捉えています。企業・地域・学生が自然につながり、新しい価値が生まれていく。そのハブの役割を部活動が担えることこそ、私たちの強みだと思っています。一緒に考え、一緒に動き、一緒に成果や熱狂を共有できる関係性。そうした“共創型”のパートナーとして、長く関係を築いていける企業と出会っていきたいです。

 

——最後に、日々応援してくださる方々にメッセージをお願いします。

 

日頃から応援いただき、本当にありがとうございます。ビジョンの実現、目標達成に向けて、部員一丸となって日々活動しています。皆さまの応援が、大きな後押しになっています。スポンサー企業様とは、金銭的な支援にとどまらず、継続的な関係を築くために、定期的な対話の機会も大切にしています。これからもWIN-WINの関係構築を目指し、部員一人ひとりはもちろんのこと、部を取り巻く大学生や小学生、高齢者といった多様なステークホルダーとスポンサー企業様をつなぐ「ハブ」としての役割も担えると考えております。ご興味をいただけましたら、お気軽にお声がけください。

 

 

競技に本気で向き合いながら、組織や事業、地域との関係性まで学生主体で考え抜いている一橋大学ア式蹴球部。その姿は、「部活動はここまでできるのか」と感じさせるものでした。サッカー部という枠を超え、価値を創出し続ける学生組織として活動していく彼らは、きっと社会に出た後も、それぞれの場所で周囲を巻き込みながら、新しい価値を生み出していく存在になっていくでしょう。

 

 

執筆:青木千奈(株式会社Koti)