頭を使うラクロスで関東の壁を超えることができるのか——名古屋大学男子ラクロス部
名古屋大学体育会男子ラクロス部は、組織力と分析力を武器に、学生主体で運営してきたチームです。昨年度、彼らは「オリジン(起源)」というスローガンのもと、組織の在り方を根本から見直し、史上初となる関東勢撃破を達成し、全国準優勝という結果を残しました。体格や選手層において、名古屋大学は決して有利なチームではありません。それでも全国の舞台で結果を残すことができた背景には、データ分析を軸にした「考えるラクロス」と、プレイヤーとマネージャーが一体となった組織改革がありました。今回は、副主将の大浦丞さんに部の活動概要から昨年度の躍進の理由、そして学生日本一に向けた今後の展望についてお伺いしました。
——部の活動概要について教えてください。
名古屋大学体育会男子ラクロス部は、1990年4月に設立された部活動で、現在は東海学生ラクロスリーグに所属しています。活動拠点は名古屋大学山の上グラウンドで、平日は朝練と夜練と組み合わせながら活動しています。練習時間は朝練の場合、月・水・木が朝7時30分から10時30分、夜練の場合、月・金の18時30分から20時30分です。月曜日は朝夕の2部練になっています。土日は、基本的にリーグ戦や練習試合が中心です。学業やアルバイトとの両立を前提としながらも、全員が日本一に向けて、高い基準で日々の練習に取り組んでいます。

——部員構成やチームの特徴について教えてください。
部員は、1年生28名、2年生19名、3年生20名、4年生17名で構成されており、各学年ともプレイヤーと同程度の数のマネージャーが在籍しています。マネージャーは単なるサポート役ではなく、戦術や分析、組織運営に深く関わる存在で、チームの一員として重要な役割を担っています。文系4割・理系6割と、理系学生が多い点も名古屋大学らしい特徴だと感じています。理系の学生が多いからこそ、試合や練習後のミーティングにおいて、物事を感覚のみで捉えるのではなく、なぜそうなるのか、どうすれば改善できるのかを事実やデータをもとに意見が交わされることも多いです。チームの雰囲気を一言で表すのであれば「十人十色」です。派手に感情を表に出すタイプは多くないですが、その分、内に秘めた強い闘志を持つ部員が多い印象です。いわゆる静かな闘志を持った選手たちが、日々の練習を積み重ねています。

——昨年度、全国準優勝に至った大きな要因は何だと考えますか?
一番の要因は、マネージャーも含めた組織改革だと考えています。「オリジン(起源)」というスローガンのもと、これまで当たり前だと思っていた練習方法や役割分担を全て見直しました。特にインパクトがあったのは、マネージャー組織を審判スタッフと分析(アナライジング)スタッフに分けたことです。審判スタッフは、練習中や試合後のミーティングでファウルやルール面の指摘を行い、選手の理解を深める役割を担っています。一方、分析スタッフは、自チームだけではなく関東の強豪校やライバル校の試合データを数値化し、選手に共有します。シュートエリア、オフェンスやディフェンスの時間配分、失点の傾向などを可視化することで感覚ではなく、根拠を持ってプレーや練習を考えることができるようになりました。技術や練習量そのものが、関東の強豪チームに大きく劣っていたわけではありません。ただし、相手の強さを具体的に言語化・数値化できていなかったことが、これまでの大きな課題だったと感じています。

——現在、チームとして感じている課題は何ですか?
最大の課題は、全国トップレベルの主に関東の強豪校との間に存在するわずかな差をどう埋めていくかという点です。現在、技術や戦術において大きく劣っている感覚はありませんが、試合で実際に対戦すると、体格差や選手層の厚さといった部分で差を感じる場面があります。主に関東のチームは、フィジカル面の基準設定が明確で、専門的なトレーナーのサポートを受けながら、筋力や身体づくりに長期的に計画的に取り組んでいます。一方で私たちは、学生主体で運営しているため、トレーニング環境やノウハウの面では工夫が必要な状況です。フィジカル面での差は、試合終盤や連戦時にあらわれていると感じています。今年度はフィジカル強化に向けて数値目標を明確に設定し、トレーニング内容を可視化することでデータを用いながら、一つ一つ改善していこうと動いています。また、関東チームは選手層が厚く、誰か一人が欠けることになってもパフォーマンスの質が大きく落ちない点も強みだと感じています。昨年の全国大会で決勝を戦った早稲田大学のようなチームと比べると、主力メンバーにかかる負担が大きく、連戦を戦い抜くための選手層の厚さは今後の重要な課題だと考えています。それに加えて、新歓活動においても楽しさを前面に出して、新入生を集めている分、実際の練習量や日本一を目指す厳しさとのギャップに戸惑い、途中で離れてしまう新入生が一定数いることも課題です。チームとして目指すレベルが高いからこそ、その覚悟をどのように伝え、納得した上で入部してもらうかは、今後さらに向き合っていく必要があると考えています。
——名古屋大学体育会男子ラクロス部の今後の目標を教えてください。
私たちの目標は、これからも変わらず「学生日本一」です。昨年、史上初となる関東チームを打ち破り、準優勝という結果を残したことで、その目標が決して夢物語ではないことを、チーム全体で実感することができました。それとは反対に、決勝の舞台で改めて感じたのは、あと一歩の差の大きさでもあります。だからこそ、今後は結果だけを追いかけるのではなく、日本一になれるチームとは何かを問い続けながら、日々の活動に向き合っていきたいと考えています。技術や戦術のレベルアップはもちろん、フィジカルの基準設定、データに基づいた練習設計、そしてシーズンを通して戦い抜ける選手の構築など、目標達成のための必要な要素を一つずつ積み上げていきます。また、名古屋大学らしさでもある頭を使ったラクロスをさらに進化させ、分析スタッフによるデータの活用を日常的なものにしていくことで、限られた時間の中でも最大限の成果を出すことのできるチームを目指しています。

——最後に、応援してくださる方々へメッセージをお願いします。
日頃から応援してくださるOB・OGの皆様、保護者の皆様、そして支えてくださる企業・関係者の方々に心より感謝申し上げます。私たちがこうして挑戦を続けることができているのは、部員の力だけではなく、多くの方の支えがあってこそだと強く感じています。私たちは結果で恩返しをしたいという気持ちと同時に、日々の取り組みや姿勢そのものでも、応援してくださる方々に誇りに思っていただけるチームでありたいと考えています。勝利だけではなく、学生主体で考え、悩み、挑戦し続ける姿を通して、この部の価値を伝えていきたいと感じています。これからも名古屋大学体育会男子ラクロス部は学生日本一という目標へ向けて、一歩一歩前進していきます。引き続き、温かいご声援とご支援をいただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
現在の組織を疑い、新たな仕組みを作ってきた名古屋大学体育会男子ラクロス部。データを軸に、日本一を本気で目指す彼らの取り組みは、大学ラクロスの常識やこれまでの歴史そのものを、少しずつ塗り替え始めています。