カンボジア教育支援を通じて学ぶ、合意形成と実行力の極意とは?——学生団体ONE LIFE
学生団体ONE LIFEは、2015年の設立以来、カンボジアの子どもたちへ教育支援を行い、これまでに5つの小学校を建設してきました。彼らは、単なる資金援助や建設作業だけでなく、代替わりのたびに「今、本当に必要な支援は何か」をゼロから議論し、その年のミッションを自分たちで再設定しています。約50名が所属するインカレ団体は、どのように合意形成を実現し、数百万円規模のプロジェクトを推進しているのか。その組織運営の核心に迫ります。
——代替わりごとに「ミッション」を再定義する戦略
ONE LIFEの最大の特徴は、代が変わるごとにその年の支援内容(ミッション)を自分たちで決定するという点です。前年の踏襲ではなく、予算算出から現地のニーズ調査までを行い、新たな価値を生む小学校建設などの“ハード支援(0→1)”が必要なのか、既存環境を発展させる“ソフト支援(1→10)”が適切なのかを徹底的に議論します。設立10年目となる昨年は、これまで行ってきた建設支援からステップアップし、中学校へのパソコン教室の設置やPC類の提供という新たな支援の形を実現しました。これは、小学校卒業後も進路の選択肢を広げるためにはIT教育が欠かせない──そう判断した議論の積み重ねが、この方針決定につながりました。常に現状を疑い、最適なソリューションを模索し、変化の激しい環境でも適応できる意思決定能力を培っています。

——7つのルールをもとにした心理的安全性の高い組織
人数の多い組織で全員の納得解を導き出すことは容易ではありません。そこで彼らが徹底しているのが、高い心理的安全性の確保です。7つのルールを掲げ、ミーティングでは感謝の言葉を欠かさず、否定をせずに意見を受け入れる土壌を作っています。「他人のことを自分のことのように思う」「感謝の気持ちを持つ」「笑顔でいる」「嘘をつかない」「悪口を言わない」「責任感を持つ」「みんな家族」といったルールを共有し、日常のコミュニケーションから議論の場まで、一貫して丁寧な関わりを重ねることで、サークルの枠を超えた強い信頼関係を築いています。この強固な組織文化があるからこそ、意見が割れるような困難な議論であっても、最終的には全員が納得して同じ方向を向くことができています。

——個人の「やりたい」を形にするプロジェクトと事業推進力
ONE LIFEの活動は、組織全体のミッションに沿って全体で動くことだけではありません。メンバー個人が興味を持った分野をプロジェクトとして立ち上げ、実行に移すことができる環境が整っています。例えば、衛生教育としての石鹸プロジェクトや、文化交流としての餃子作りなど、個人のやりたいことが企画として形になり、実際にカンボジアでの支援活動に組み込まれています。資金調達においても、年4回の国内イベントを開催し、飲食イベントや音楽フェスなどを自ら企画・運営することで収益を上げています。企業の協賛獲得やコンテストへの出場も含め、自分たちの手で活動資金を生み出し、支援という価値に変換しています。この一連のサイクルを通じて、学生たちは企画力や交渉力に加え、プロジェクトをやり切る実行力まで総合的に鍛えています。

——最後に
学生団体ONE LIFE は「一度きりの人生を最高に楽しむ」という価値観のもと、カンボジアへの支援を通じて自らも成長を続けています。支援への強い想いを原動力に、議論を重ね、合意形成し、組織として成果を生み出す方法を実践的に学び続けています。2025年度は「想輪(そうりん)」というビジョンを掲げ、企業や地域社会との連携をさらに広げようとしています。その行動力と組織運営のノウハウは、これからの社会課題解決においても大きな力となることでしょう。